彼女の為なら【七つの大罪】part8 (ページ10)

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彼女と予兆ページ10

僕は団長を見つめたまま呆然としてしまうが
隣にいたゴウセルが僕の顔の前で手を振るのが鬱陶しいので、僕は黙って髪の毛でその動きを止めさせた。

……だから、空気読めっての。

「…死んだんじゃ、なかったっけ？」

「ああ、死んだ！でも生き返った！」

「何そのチート」

しかも、あっさり言ってしまう辺りやはり団長らしい。

こんなにもあっさりしていると、こちらも拍子抜けしてしまう。

再会の感動なんてものはもう既に引っ込み、涙の代わりに出たのは溜息。
こうなって来ると、あの時泣いてしまったのがバカバカしくなってくる。

…リラの言う通り、団長生きてたんだ。
どうやって生き返ったのかは知らないけれど。

いや、そもそもそんな事出来るのか知らないけれど。

でも現に目の前にいるんだ。
ちゃんと生きてるんだ。

じゃあもう、それでいいじゃない。

頭が悪いからそうやって自分を無理矢理納得させると
つい、自分の口元が緩んでいくのを感じた。

「にしてもお前ら3人は相変わらず仲がよろしいようで」

「この女装癖メガネをリラと一緒にしないでくれる？」

「A、そろそろ本当に怒っちゃうわよ？」

「つかゴウセル、その服気に入ったのか？
ソレリラのだろ？」

「気に入った」

「……なんでリラの制服だってわかったの？」

相変わらずマイペースで、相変わらず変態の団長。

再会早々、団長を睨んでしまうと
団長は「にししっ」と笑って誤魔化した。

「ところでマーリン、俺達をこんな所に集めて一体なんの話だ？」

…ああ、もうホント、マイペースだな。
もう話切り替えるのかよ。

いや、どっちかってったら問い詰められる前に話題を切り替えたってのが正しいか。
つか知らされてなかったんかい。

団長はおもむろにマーリンの方を向いて尋ねると
マーリンは相変わらずの不敵な笑みを浮かべながら答えた。

「今朝、国王が再び予兆を見た」

「…！！」

国王…あの髭の長いオッサンか。

あの人の魔力は〝千里眼(ビジョン)〟とか言うんだっけか。

簡単に言えば未来が見えるんだよな。

マーリンは唄うように続けた。

『真昼の月輝き、たれこめる霧王都を満たす時……
我らを王国の反逆者たらしめた因縁の城の頂きに
陽炎の如きもう一つの月が現れ＿＿＿』

そこまでマーリンが告げてから、おもむろに上を見上げる。

団長の真上にはマーリンの言った通り
もう1つのの月がﾕﾗﾘと現れたから。