彼女の為なら【七つの大罪】part8 (ページ49)

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彼女はわからないページ49

今にも泣きそうに歪んだゴウセルの顔。
その顔を見ていると、胸の辺りがｽﾞｷｽﾞｷと痛む。

……痛む？なんで？どうして？
何故、僕の胸が痛むんだ？

知らない痛みに僕は思わず戸惑う。

……いや、知ってる？
前から僕はこの痛みを知っている？

「…？……？」

「……A？」

わからない。わからない。

胸に手を当ててもわからない。

ふらり、足元が揺れる。
傍の壁に手をつくと、ゴウセルが驚いた顔をして僕を見遣る。

やめろ、そんな顔で僕を見るな。
お前は人形らしくしてろ。

でないと、僕は。

「大丈夫、A…？どうしたの？
具合でも悪い……」

「それ以上、近付くな」

ヤツか近付いて来る。
心配そうな顔をして、歩み寄って来る。

だから僕は反射的にそう言うと、髪の毛(プラチナソード)の先端をナイフの様に鋭くしてヤツに突き付ける。

これ以上、僕を可笑しくしないで。

これ以上、僕を惑わさないで。

お前の顔を見ると可笑しくなる。
お前に触れると可笑しくなる。

〝コレ〟は認めちゃいけないんだ。
だって認めたら、僕は。僕は。

だから、頼むよ。お願い。

これ以上、僕に＿＿＿

「………これ以上、僕に酷い事言わせないで」

「……えっ」

そう告げた僕の声は何故だか震えていた。
気付けば身体も震えていた。

ゴウセルの瞳が揺れる。綺麗な黄金色の瞳。
水晶みたいに透き通った瞳。

その瞳に映る僕の顔は、きっと酷い顔になってんだろうな。

「おいーっス、そろそろ準備……って、ありゃ？」

気まずい沈黙が暫く流れ、ソレを不意に戻って来た団長が破る。

入った途端、異様な空気を察してか団長は僕とゴウセルを不思議そうに見遣る。
そうしてﾎﾟﾘﾎﾟﾘ頭を掻きながら「おいおいおーい」と呆れたような顔をした。

「朝っぱらから喧嘩ですか？
とりあえずA、髪の毛戻す！」

「………」

「ゴウセルも、あんまちょっかいかけんなって。
また刺されるぞ、文字通り」

「えっと……団長、コレはそういうのじゃなくって…」

ゴウセルがなんか話し出す前に僕はその場から瞬間移動術で逃げると、ベットに腰掛けて思わず頭を抱えた。

胸の奥はまだｽﾞｷｽﾞｷ痛み、僕は顔を顰める。
不快な痛みだ……これだから感情は嫌いなんだ。

「これだから、僕はっ……」

それから暫く、僕は部屋から出なかった。