彼女の為なら【七つの大罪】part8 (ページ48)

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彼女の過ちページ48

誰もいないなら仕方ない。
僕は部屋に戻ろうと踵を返すと、不意に「ねぇ」と呼び止められた。

反射的にヤツを睨み付けると、ゴウセルは少しの間言い淀む。
そうして苦笑いを浮かべると「大丈夫？」と首を傾げた。

「昨日、Aも頭が痛いって言ってたでしょう？
大丈夫？もう治った？」

「……おかげさまで。今朝は最悪の目覚めだったよ」

「…〝ナージャ〟の夢を見たの？」

「…ナージャ？」

ゴウセルが告げたその名前に僕は思わず眉を顰める。

聞き覚えのない名前だった。
ああ、でもマーリンとかが言ってたような……
ゴウセルの記憶の中にいた、女の名前だろうか？

僕の反応にゴウセルは「やっぱり」と呟くと
ゴウセルは眉を下げながら笑った。

「…ナージャはお前の恋人なのか？」

「うん……俺の最愛の人だよ。
優しくて、面白くて、人形の俺を好きになってくれた……ゴウセルの夢を教えてくれた。素晴らしい女性さ」

「……ふぅん」

少し気になったから、その〝ナージャ〟とやらの事を聞いたら、途端にゴウセルはうっとりとした顔をして、話し出す。

頬も心做しかほんのり赤く、まるで小説に出てくる様な恋する乙女のようだった。

＿＿＿ﾁｸﾘ。

「お前なんかと付き合ってくれるヤツがいてくれたとはな。しかも……恋人って。さぞかし大変だっただろうな、その女」

「違うよ、そんなんじゃない。俺もナージャも好きで一緒にいたんだ。お互いに好きだから、大好きだから……愛していたから。だから、俺達は……」

＿＿＿ﾁｸﾁｸ。

「ﾊｯ、人形のクセに〝愛してる〟は笑える。
その心だって、所詮は作り物だろ？」

「そんな事ないよ、A。
ゴウセルは最高の魔術士なんだ。この心は正真正銘のっ…！」

「ナージャとか言う女もホントにお前を好きでいたのか疑問だわ。だってお前どう見ても女顔だし。にこにこニコニコ笑いやがって。お人形のクセに」

「いい加減にしてよ…！どうしてAはいつもそうやって酷い事ばっかり言うの！！」

＿＿＿ｽﾞｷﾝ。

気付いたらゴウセルは悲しそうな顔をして声を荒らげた。

僕は思わず目を見開く。
額から嫌な汗が流れ落ちた。

……ああ、またやっちまった。