彼女の為なら【七つの大罪】part8 (ページ45)

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彼女は嫌いだページ45

「大丈夫…？A？どれくらい痛むの？
お酒のせい……ではないよね？」

「………」

……コイツの声を聞くのは、やっぱり僕には良くないらしい。

しかも今までと違って今のコイツには感情がある。
だからその分、更に不気味になったというか。

エレインと同じ顔をして、僕に近寄ろうとするゴウセル。
1歩ヤツが踏み出した時、反射的に僕も1歩後ろに後退すると、ゴウセルはその場で踏みとどまって、悲しそうな顔をした。

だから、そういう顔すんなっての……
人形のクセに調子狂うだろ。

「……平気だっつってんだろ。お前は一生引っ込んでろ」

「でもA！ソレ、ただの頭痛じゃないんでしょ？
〝ソウル・ローテーション〟の影響で……」

「っるっせぇな、平気だっつってんだろ！」

そこまで言ってしまってから、僕はﾊｯとゴウセルを見遣る。

ああ、またやっちまった……
どうして僕はゴウセルが相手だとこうなるんだ。

案の定、更に悲しそうな顔をするゴウセル。
人間みたいに、今にも泣きそうな顔しやがってさ。冗談じゃない。

しかも今の怒鳴り声で寝てたヤツらが何人か起きちゃったみたいでさ。

ディアンヌが大きな欠伸をしながら半身を起こし
キングも目を擦りながらおもむろにこちらの方を見遣る。

厨房で片付けをしていたエスカノールも「どうしましたか？」と顔を出し、エレインも何か言いたげに僕を見遣る。

これ以上誰かに何か言われる前に。
これ以上僕が何か言う前に。

僕は逃げるように部屋まで瞬間移動すると、膝を抱えて浮き上がった。

「っ……だから、嫌いなんだよっ……」

ｸﾞﾁｬｸﾞﾁｬの感情のまま、膝の中で細く呟く。

本当にゴウセルは、アイツは、あの人形は。

どこまで僕をバカにするんだ。
どこまで僕を振り回すんだ。

悲しそうな顔しやがって。
泣きそうな顔しやがって。
傷付いたような顔しやがって。

だから嫌だったんだ。

だから嫌いなんだよ、お前は。

『俺は感情を理解する心が欲しい』

『そもそも『心の魔法』など存在しないのだ…

ゴウセル自身の中に存在している。
＿＿＿＿＿＿今も昔もな』

「………クソが」

………だから、嫌いなんだよ。