彼女の為なら【七つの大罪】part8 (ページ2)

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〝彼女〟とKY ページ2

「……いい」

少しして〝彼女〟は呟く。

まるで拗ねた子供のようだった。

「やっぱり、強がってるのね」と笑おうとしたけれど
続けられた言葉に私は笑みを無くした。

「外に出ても僕は誰かを傷付けてしまうかもしれないから……いい。出さなくても」

「……」

「……わかったら、さっさとどっか行け」

再びこちらの方を向いた〝彼女〟はｷﾞﾛﾘとまた私達を睨むと、「シッシッ」とハエを追い払うように手を払った。

でも〝彼〟はおもむろに牢屋の傍に歩み寄ると
鉄格子の間にその細い腕を伸ばす。

〝彼女〟は一瞬ｷﾞｮｯとしたような顔をしたが、すぐに「どっか行けって！」と怒鳴り声をあげる。

それでも〝彼〟は動じずに手を差し出すと、じっと〝彼女〟を見つめながら口を開いた。

「そこの本を見せてくれ」

「…………は？」

「見た事のない本が幾つか積まれている。
今、読んでいないのなら俺に読ませてくれ」

………何を言い出すかと思えば。

相変わらず〝彼〟は空気が読めない人ね。

でもそのおかげで〝彼女〟の調子は狂っちゃったようで
さっきまで敵意剥き出しって感じだったのに「何なんだよ…」と呆れたような顔をして、積まれている本を見遣る。

そうして意外な事にその本を全て抱えると〝彼〟に見せながら「どれなの？」と首を傾げた。

「その黒色の表紙のやつと黄色の表紙のやつ……
ああ、紫色のも見覚えのない題名だ」

「じゃあソレ全部持ってけ。
…ったく、お前は相変わらず空気が読めないのな」

「前よりは読めるようになったぞ、空気は」

「前よりは…？」

困惑の表情を浮かべる〝彼女〟の手から数冊本を受け取りながら〝彼〟は告げると、〝彼女〟の表情が更に歪んだ。

でも〝彼〟のおかげで随分と話しやすい空気にはなったので、私は再び会話を試みる。

「本を読むのはあとにして、A。
まずはゴウセルを外に出すのが先よ」

「…何？」

途端に鋭い目付きがこちらに向けられる。

見た事のないその表情にちょっと笑いそうになったけれど堪えて、私は〝彼〟に鍵を手渡した。

〝彼〟は素直に受け取ると貰った本を片手に移動させ、もう片方の手で鍵穴に鍵を差し込む。

その間に「どういう事だ？」と首を傾げる〝彼女〟に私は説明してあげた。