△リボンが58こ▽ ページ12
「…？どうしたの、まなべ？行かないの？」
「……！」
彼女に声を掛けられ、真名部の心臓が飛び跳ねる。
自分の考えを悟られたかとさえ思ったが、そうでは無いようだ。
Aは不思議そうに真名部を見つめながら「はーやーく！」と真名部を急かす。
1歩、真名部は足を前へ出す。
そうしてもう1歩、丁度外との境目に爪先が当たる。
真名部にはまるで目の前に見えない壁でも張られているかのように見えた。
この先を越えたらいけない。
此処から前に出てはいけない。
そんな風に、無意識に思っていた。
そのまま真名部は身体も全て外に出す。
そうしたら玄関の扉はAによって閉められ、彼女は真名部に背中を向けて、持っていた鍵を扉に刺した。
無防備。またしても彼は無防備な状況に晒される。
Aは鍵を閉めるのに手こずっているようで、ｶﾞﾁｬｶﾞﾁｬと鍵を回しながら「あれ〜？」「閉まってる？」と何度も確認していた。
でも何度やっても鍵を閉められないらしく、また随分とそちらに集中しているようだ。
今の内に走って逃げれば、彼女は忽ち反応が遅れ、僅かながらタイムラグが発生するだろう。
その間に体力の無い自分が何処まで逃げ切れるか。
彼女の身体能力については未知数なので予測出来ないが、少なくとも自分の身体能力を考えると逃げ切れる自信は無かった。
だが周りを見渡してみると、この辺りはどうやら住宅地。
捕まっても騒ぎ立てれば、きっとソレを聞きつけて人はやって来るだろう。
そうすれば周りはもしかしたら助けようと動いてくれるかもしれない。
そうしてくれなくとも、通報してくれれば警察が動くので自分は無事保護されるかもしれない。
そうなれば自分は晴れて自由の身。
両親の元に戻され、めでたしめでたしだ。
「………はァ、」
真名部は深く息を吐いた。
そうして1度、目を閉じる。
強く拳を握り締め、真名部は足を前に出そうとするも
直後にそっと目を開くと、ゆっくりと拳を開いた。
掌はじっとりと汗で濡れ、真名部は不快感に顔を歪める。
そうして大きな溜息を吐くと、彼は制服のズボンで掌の汗を拭ってから、くるりと身体ごと振り返った。
「……鍵、貸して下さい」
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＊IJu＊(プロフ) - 僥姫さん» コメントありがとうございます！楽しんで頂けているようで作者も嬉しいです( ´ ▽ ` ) (2020年7月5日 2時) (
レス) id: 1371b955e9 (このIDを非表示/違反報告)
僥姫 - やばい 面白い (2020年7月2日 10時) (レス) id: b3f17b46d5 (このIDを非表示/違反報告)
＊IJu＊(プロフ) - 黒音_幻月さん» コメントありがとうございます！楽しんで頂けているようで作者も嬉しいです|ω`)これからも頑張らせてもらいます〜！ (2020年6月18日 1時) (レス) id: 1371b955e9 (このIDを非表示/違反報告)
黒音_幻月(プロフ) - 続編おめでとうございます。少しずつ主人公ちゃんに心を開き始めている真名部くんや、この先の展開にいつもワクワクしながら読み進めています。これからも応援させていただきます…! (2020年6月17日 6時) (レス) id: 71e1357481 (このIDを非表示/違反報告)
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