△リボンが50こ▽ ページ4
浴室は案の定というか、想像通りというか。
長く掃除されていないようで、壁のタイルの隙間は所々黒ずんでいた。
ソレは壁のみにならず、浴槽の外側や天井にも見受けられ、メガネを掛けていなくても見えるソレに真名部は思わず顔を顰めた。
鏡も曇り、浴槽も垢で汚れ、シャンプー等が置かれた台には長い髪の毛が何本か絡み付く。
しかし、ここまででこの状態は何となく予想が付いていた真名部は不快感は感じつつもそこまで驚きもせず、寧ろ予想していたよりも綺麗だと思えるぐらいだ。
真名部はまずシャワーの水が温かくなるまでタイルを濡らし、ある程度温かくなると頭からそのお湯を被る。
一応バスチェアは浴槽の中に無造作に突っ込まれていたが、暫く洗われていない様子の浴槽の中にひっくり返った状態であったので座る気にはなれなかった。
実に4日振りのシャワーは他人の家ど心地好く、束の間心に安らぎを感じた。
目を瞑れば、自分の家のバスルームであるような気がして。
あの家に帰って来れたような気がして。
酷く懐かしく感じるそこを想像して、真名部は落ち着いた呼吸を繰り返した。
『まなべ〜〜！』
「っ…！」
しかし、すぐに彼は現実に引き戻される。
不意に扉越しにAの呼ぶ声が聞こえ、真名部は咄嗟に振り返る。
曇った扉の向こうにはもう見慣れた彼女のシルエットがあり、彼女はﾋﾟｮｺﾋﾟｮｺと跳ねた髪を動かしながら無邪気に続けた。
『タオル、此処に置いておくね！』
「は…はい！ありがとうございます」
『他にも必要な事があったら呼んでね！
私、部屋で待ってるからね！』
そう言って彼女は脱衣場を出て行き、1人真名部だけが残される。
あっという間の会話の後、真名部は1つ溜息を吐く。
そうして再び汚れた浴室を見て、此処は自分の自宅ではないんだと思い知る。
でも不思議と真名部に恐怖は無かった。
多少がっかりもしたものの、そこまでのものではなく
真名部は自分が思っていたよりも随分と平然としていられた。
確かに彼の中には『帰りたい』という願いはあったが
それと同時に、彼の中に存在するモノが彼の恐怖を和らげた。
「(部屋で待ってる、ですか……)」
真名部はそっと目を細めると
1度シャワーを止めてから、家でやるのと同じように頭を洗い始める事にした。
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＊IJu＊(プロフ) - 僥姫さん» コメントありがとうございます！楽しんで頂けているようで作者も嬉しいです( ´ ▽ ` ) (2020年7月5日 2時) (
レス) id: 1371b955e9 (このIDを非表示/違反報告)
僥姫 - やばい 面白い (2020年7月2日 10時) (レス) id: b3f17b46d5 (このIDを非表示/違反報告)
＊IJu＊(プロフ) - 黒音_幻月さん» コメントありがとうございます！楽しんで頂けているようで作者も嬉しいです|ω`)これからも頑張らせてもらいます〜！ (2020年6月18日 1時) (レス) id: 1371b955e9 (このIDを非表示/違反報告)
黒音_幻月(プロフ) - 続編おめでとうございます。少しずつ主人公ちゃんに心を開き始めている真名部くんや、この先の展開にいつもワクワクしながら読み進めています。これからも応援させていただきます…! (2020年6月17日 6時) (レス) id: 71e1357481 (このIDを非表示/違反報告)
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