○ゴーセル○ ページ40
「………ねぇ、」
私がひたすら無口を貫いていたある日。
ふと、久しぶりにゴウセルと普通にお話したくなった。
やっぱり元の性格が黙れない性格だからかな。
私、人とお喋りするのは嫌いじゃないんだよ。
だから私は声を出した。
なるべく短く、変にならないように。
ゴウセルったら、それが余程嬉しかったのかな。
台所でご飯を作っている最中だったんだけど
私が声を発するとお玉を片手にすぐやって来て「どうしたんだ？」と首を傾げた。
その一連の行動はまるで人懐っこい子犬のようだった。
腕がまだ動いていたら、間違いなくその頭を撫でていただろう。
「
ちゃんと変な言語にならないように、頭の中で何度も何度も練習したのに。
本番になってすぐに変になるなんて。
しかも、よりにもよって1番間違ってはいけない所を。
「……」
「…？どうした、A？読んでいる本がなんだ？」
喋り出したと思ったら、急に黙っちゃったから。
不審に思ったゴウセルは首を傾げて私を見遣る。
私は視線を落として、1つ息を吐くと
もう一度顔を上げて、彼の名前を呼んでみた。
「………ゴウ、セル」
「ああ、ゴウセルだ」
「ゴ、ウ…セル」
「ちゃんと聞こえているぞ？どうしたんだ？」
「……
「……本当にどうしたんだ？」
何度も何度もゴウセルの名前を呼ぶ私に、ゴウセルは私の顔を覗き込む。
だが私と目が合うと、ゴウセルは微かに目を見張り
お玉を机の上に置くと、私の隣に腰を下ろした。
「……ご、お、せる……ご、お…せる……ごうせ、る……」
「…呼び方は何でも構わない。だから気にするな」
「で、もっ…！私、ゴーセルって……ゴーセルの、名前……ちゃんと、言えなくって……！」
ああ、まただ。またちゃんと言えない。
ちゃんと、ゴウセルの名前が言えない。
油断すると
頭の中ではちゃんと呼べるのに。
口で言う時は全然違う。
何より、大切な人の名前をきちんと呼べないなんて。
今までちゃんと言えてたのに。こんな、今更。
悔しくて悔しくて、私は思わず俯いて涙を堪えると
ゴウセルは私を抱き締めてくれた。
大きな手が私の頭の上に乗っかる。
そうしていつものように優しく、動く。
ああ、そんな事されたら……涙が溢れちゃう。
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＊IJu＊(プロフ) - シーナさん» コメントありがとうございます！そう言って頂けて嬉しいです〜( ´ ▽ ` ) (2020年5月27日 2時) (
レス) id: 1371b955e9 (このIDを非表示/違反報告)
シーナ - 最初から読みました！スゴく綺麗で切ないお話に涙腺が崩壊しました………！ (2020年5月26日 14時) (レス) id: e97b238670 (このIDを非表示/違反報告)
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