○春の訪れ○ ページ18
「わあ……ちょっとずつだけど、お花咲いてきてるね」
ある昼下がり。
体調が良く天気も良いので、私とゴウセルは久しぶりに外に出掛けた。
少し見ない間に随分と森は姿を変えて、彩りを実らせていく。
何度見てもこの光景は新鮮で、それでいて見ていて飽きない。
特に湖の所まで来ると、色とりどりの花の蕾があって、幾つかもう咲いているものもある。
その調子で行けば、あと数日すれば満開なんだろうなぁ。
「きれーい…もうすぐ春って感じだね！」
花畑の光景を目の当たりにして、私は思わず頬を綻ばせる。
ゴウセルも心做しか嬉しそう。
やっぱりゴウセルも寒いより暖かい方が好きなのかな。
「今年も花冠、作れるかな？」
でも私がそう尋ねたら、ゴウセルの表情が一瞬固まった気がした。
次の瞬間にはいつも通りの無表情で言葉を返す。
「…ああ、花が咲いたら作ろうか」
「ふふっ、今回はゴウセルに作ってもらっちゃおうかな〜」
「Aのように上手く出来るか心配だ」
「そう？ゴウセルすっごく綺麗な花冠作るよ！
今度やり方教えてほしい〜、なんてね」
「良いだろう、この〈
「わーい、やったぁ！春が楽しみだなぁ〜！」
ゴウセルに花冠の作り方を教えてもらう約束をして
私は思わず体を左右に揺らして鼻歌を歌う。
でも内心、自分で言っていて少し悲しくなって来る所もあった。
だって私は以前のように手を動かせないから。
花冠なんて到底作れっこないのに、そんな約束しちゃって。
ああ、きっとゴウセル困ってるだろうな。
優しいから言わないだけで、きっと困ってる。
ごめんね、ゴウセル。
でも時々こうして目を逸らさないと、どうにかなってしまいそうになるの。
目の前の現実に狂いそうで。
近付く足音に目眩がしそうで。
こんな事に付き合わせてごめんね、ゴウセル。
もう少ししたら全部終わるから、今だけ許してね。
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