○嘘つき○ ページ12
朝食を済ませた後もルーデンは来なくって、それでも暫くはゴウセルと一緒にいつも通りに過ごした。
今日はゴウセルが劇をしてくれたの。
1人で何役も演じ分けて、物語を語ってくれた。
内容は私も知っているお話だったけれど、劇になるとまた違った面白さがあったし、何よりゴウセルが色んな表情をしてくれるから、見ていて楽しかった。
一通り劇が終わると、もうお昼。
ルーデンはまだ来なかった。
その後はいつものようにゴウセルと一緒に本を読んでいたの。
私は本のページを捲れなくなってしまったから、ゴウセルが代わりにページを捲ってくれてね。
でもどうしてか話の内容が頭に入って来なくって
空が暗くなっていくと、私は窓辺を気にするようになった。
そうして空はオレンジ色に染まる。
ルーデンが来る時間帯だ。
その時間になると私は落ち着きが無くなったと思う。
ゴウセルに何度も注意されたし、自分でも体が落ち着かないってわかってた。
ゴウセルに変な所がないか尋ねて、その度に「大丈夫」って言われて。
出迎える準備もバッチリにして、今か今かとルーデンが来るのを待っていた。
でも、ルーデンはやって来なかった。
「……」
「……」
やがて空は真っ暗になり、綺麗な月が空に浮かぶ。
窓の外をずっと眺めていた私は、視線を落とすと溢れそうな感情を抑えて、必死に口を噤んでいた。
「…………A」
「…」
そんな私を心配してくれたんだろう。
優しいゴウセルは私に声を掛けてくれた。
でも今口を開いたら、何て言うかわからなくって。
私はひたすら黙っていたら、不意にゴウセルが後ろから私を抱き締めてくれた。
「A、」
「……」
耳元で囁かれる、私の名前。
ゴウセルの体は人より冷たいけれど、あたたかかった。
私はゆっくり顔を上げると、そっとゴウセルの方を向いた。
そうしてゴウセルの方に体を傾けると、ゴウセルはしっかり私を受け止めてくれた。
ﾎﾟﾝﾎﾟﾝ。ゴウセルが私の頭を撫でてくれる。
すごく気持ちいい。安心する。
いつもならそのはずなのに。
何故だか無性に腹が立って、嫌な感情が私の中に募る。
歯を食いしばり、ソレが口から溢れないように耐えるけれど、この時の私はもう限界だった。
「……ゴウセルの嘘つき」
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＊IJu＊(プロフ) - シーナさん» コメントありがとうございます！そう言って頂けて嬉しいです〜( ´ ▽ ` ) (2020年5月27日 2時) (
レス) id: 1371b955e9 (このIDを非表示/違反報告)
シーナ - 最初から読みました！スゴく綺麗で切ないお話に涙腺が崩壊しました………！ (2020年5月26日 14時) (レス) id: e97b238670 (このIDを非表示/違反報告)
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