◇ラプンツェルとテレビ ページ36
「買って来るから、お前はその間外で待ってろ」
レジに行く前にフドウにそう言われて、私は言われた通りコンビニの外へ。
その間、私は内心擽ったい気持ちで満たされていた。
フドウったら、素直じゃないんだから。
やっぱり好きなんじゃん、バナナプリン。
フドウが好きなバナナプリンは一体どんな味がするんだろう…？
ああ、食べるのが楽しみだなぁ…いつ食べようかなぁ…
やっぱり、ああいうのって、お風呂上がりとかに食べるのが1番？
でも食後のデザートにもいいよね！
でも1番やってみたいのは深夜！
真夜中に誰にも知られず、こっそりと食べてみたい！
病院では夜間は勿論起きてたら怒られちゃうし
定期的に看護師さんが見回りに来るから、やろうと思っても出来なかったの。
それに人と一緒にやるってのがまたいいよね！
なんだか共犯者みたいで！
……まぁ、フドウが深夜に一緒に食べてくれるとは思えないけれど。
「…！」
自分でも口が緩んでいるのがわかる。
あのプリンをフドウと一緒に食べるのが今から楽しみで。
待ち遠しいな、早くフドウ戻らないかな、ってｿﾜｿﾜしながら待っていたら、ふと正面のお店が目に入った。
そのお店は…電気屋さんだったのかな？
ガラス越しに色んな電化製品が並んでいるのが見えて、ショーウィンドウには大小様々なテレビが幾つか並んでいた。
そのどれもが同じ映像を映し出し
私はその映像に釘付けになった。
流れていたのは、記者会見の映像。
沢山の記者の前、マイクに囲まれて2人の男女が喋ってる。
音はガラス越しだから聞こえないけれど、字幕があったからその内容は理解出来た。
ただ、私の頭がその内容を理解するのに時間がかかった。
『娘を返して下さい』
女の人が、涙を流しながら言う。
ハンカチで何度も目を拭っているからか、目は赤く腫れていて。でも涙が止まる様子はなかった。
『あの子は私達の宝なんです』
続けて男の人も言う。
男の人も目が腫れてて、しかも目の下にはクマが出来ていた。
何度も何度も頭を下げながら、画面に向かって口を動かす。
『あの子は病気で、体が弱くて、先も短いのに…こんな…こんな事って……』
『お願いです、返して下さい。
これ以上、あの子を悲しませないで下さい』
「……」
私はただ、ぼんやりと画面を見ていた。
まるでアニメを見ているような感覚。
でも画面の中で話している2人は間違いなく、現実にいる人達だった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 82人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
＊IJu＊(プロフ) - アインツバル(家のパソコン)さん» コメントありがとうございます〜！僕にはもったいない嬉しいお言葉…(´；ω；`)ノロノロ更新ですが、これからも頑張ります〜！ (2019年12月8日 15時) (
レス) id: 1371b955e9 (このIDを非表示/違反報告)
アインツバル(家のパソコン) - わぁぁぁ、続編本当におめでとうございます！もう文章が光り輝いて見えるレベルですね……これからも作者様のペースで頑張って下さい、ずっと応援してます！ (2019年12月7日 18時) (レス) id: ae0283035e (このIDを非表示/違反報告)
＊IJu＊(プロフ) - 時雨（元．不動彩香（アヤカ））さん» コメントありがとうございます〜！嬉しいお言葉頂きました(*´∀｀)これからも更新頑張りますっ！！ (2019年12月1日 1時) (レス) id: 1371b955e9 (このIDを非表示/違反報告)
時雨（元．不動彩香（アヤカ））(プロフ) - 続編おめでとうございます、やっぱり貴方は凄いです！最初の一ページから素敵です、更新頑張って下さい！応援してますね！！ (2019年11月30日 15時) (レス) id: b421c0e73a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
