◇ラプンツェルの準備 ページ18
彼は昼間と同じような笑みを浮かべながら窓から入って来ると、服に付いた葉っぱをその場で払い、私の方に向き直る。
薄暗いからその浮かべた笑みが更に怖く思えたが
それ以上にこの瞬間がまるでおとぎ話のような展開に思えて、少しだけドキドキしてしまった。
「…ほぉ?ちゃんと準備は済ませたようだな」
私の姿を天辺から爪先まで見て、その人は意地悪く笑う。
ダサい格好で笑われてるのかと思ったけれど…そうじゃないみたい。
私、全然服なんて持ってないから今、Tシャツとジーパン姿なの。
「エラいエラい」なんて皮肉っぽく言ってたけれど
不意に表情を無くして私に顔を寄せると、私の耳元で低く囁いた。
「……で?エイリア石は?」
「も……も、持ってる」
「じゃ、とっとと此処出るぞ。人が来る前に」
そう言うと彼は窓に片足を乗っけて手を付き、『来い』と手招き。
私は少し戸惑いながらもエイリア石を首に掛け、彼と同じように窓の方に寄った。
すると彼は傍の木を指差しながら淡々と告げた。
「飛べ」
「…えっ?」
「飛んで向こうの枝に掴まれ。
幾ら病気でも、それぐらいは出来るだろ?」
…確かに私は腕も足もちゃんと動かせるし、物だって掴める。
エイリア石があれば運動しても発作だって起きないだろうし。
でも、それでも。私はほとんど運動していなくて。
だから体も弱いし力も無い。
自分の体重を支えるのさえ危うい感じなのに
そんな私が枝にぶら下がる事が出来るのだろうか?
しかも此処は2階。大した高さじゃないって普通の人は思うかもだけど、それでもこの高さから向こうの枝に飛ぶのは勇気がいる。
もしも失敗してしまったら…きっと、痛いだろうな。
頭から落っこちたら死んじゃうのかな?
足とか骨折したらどうしよう。
不安ばかりが募って募って、私は向こうの木を見つめながら体を固まってしまう。
そんな弱虫な私に彼は呆れてしまったんだろう。
大きな溜息を吐くと、私に背中を向けた。
「…ッチ。見本見せてやるから、しっかり見とけよ」
「…!」
彼は苛立ちを含めた口調でそう言うと
窓枠に足を掛け、片手で窓枠を掴みながら立ち上がった。
窓枠の上に立っているので見ているこっちは足が滑って落ちてしまわないかハラハラしていたが、彼は風が吹いているのも気にせず涼しい顔をしていた。
そのまま慣れた様子で向こうの枝に飛んで、片手で枝を掴み、地面に降り立った。
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*IJu*(プロフ) - 桜吹雪さん» コメントありがとうございます〜!箱庭少女の方でもコメントありがとうです^^桜吹雪さんの好みに刺さったようで良かったです()ノロノロナメクジ更新なのでのんびり待っていてくれると嬉しいです…すみませんorz 桜吹雪さんこそ風邪など引かないように!更新頑張ります! (2019年10月30日 1時) (レス) id: 1371b955e9 (このIDを非表示/違反報告)
桜吹雪(プロフ) - コメント失礼します。他作品でもコメントさせて頂いたものです。いやもう.....神様ですかっ!?()好みドンピシャです!毎朝、更新されてないかつい確認してしまいます(笑)最近は寒いので、お体に気を付けて頑張ってください!応援してます! (2019年10月29日 20時) (レス) id: 82aa4d9473 (このIDを非表示/違反報告)
*IJu*(プロフ) - アインツバルさん» コメントありがとうございます!一気読みする程夢中になって頂けて嬉しいです( ´ ▽ ` )影山怖いですもんね、注意してね……(他人事)これからも更新頑張ります〜! (2019年10月1日 1時) (レス) id: 3241b35fe8 (このIDを非表示/違反報告)
アインツバル - *IJu*さん» 作者様の文才や世界観に引き込まれ、つい一気読みしてしまいました!黒井ちゃん、影山には気をつけて……!!(オイ←)これからも頑張って下さい! (2019年9月27日 16時) (レス) id: db0b681609 (このIDを非表示/違反報告)
*IJu*(プロフ) - 神田・スカーレットさん» コメントありがとうございます!真・帝国の不動くんは良いぞ……()オリオンの不動くんは真・帝国のようなトゲトゲイガイガが丸くなった感じですよね、それはそれは可愛いと思います( ˇωˇ )木の上で寝てた時笑いましたw (2019年9月17日 13時) (レス) id: 3241b35fe8 (このIDを非表示/違反報告)
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