【イナイレ】シッカーラプンツェル【不動明王】

◇ラプンツェルの困惑 ページ11

「………うそだ」



やっと口から出た言葉。
震える声で、絞り出すように。


2人の事はよく知らない。
昔からのお友達ってワケじゃないから。
たった数日、話しただけの仲だから。

でもその数日の間の2人から、そんな事はありえないと思った。



私の返答にくつくつと笑うその人。

こちらを馬鹿にするかのような口調で続けた。



「それが有り得たから2人はいなくなったんだろ？」

「ウソだ！アナタはそうやってウソついて、私を騙すつもりなんだ！」

「じゃあ逆に考えてみろよ？自分の意思で此処を出て行った他に、中学生男児2人を連れ去る方法をよォ？」

「っ……」

「誘拐するにも此処じゃ人の目があり過ぎるし。
運良く騙せて誘導したとしても、見回りに見つかっちまったら病院の外には連れ出せない。

無理矢理連れれば暴れられるし捕まるだろうし。
第一、中学生とは言えあの帝国学園のサッカー部員様だ。鍛えてる上に頭も切れるとなるとそう簡単に連れ出せねぇと思うけどなァ？」



……悔しいけど、きっとその通りだ。

2人は頭が良くって運動も出来る。
男の人って力が強いって聞くし、2人が本気になればそう簡単には捕まらないはず。


私は下唇を噛み締め、相手を睨む。
だけど相手は更に煽るように笑うだけだ。



……本当に、2人は自分達の意思で此処を出て行ってしまったの？

自分の意思でこの怪しい男の人について行ってしまったの？


まだ疑心が残る中、ぐるぐると考えを展開させる。
考えれば考える程頭がこんがらがってくる。

だって何にもわからない。
何一つ私の知りたい事がわからない。


それでも理解しようと頭を動かしている内に、落ち着き掛けていた呼吸がまた荒くなる。

呼吸が、上手く出来ない。
混乱し過ぎてパニック状態になってしまったのかもしれない。


私は思わずその場に膝をつき、喘ぐように空気を求める。

このままじゃマズイと思った私は這いずるように机の近くまで寄って、いつものように机の上の吸引薬を……



「……あぁ、お探しの物はコレか」




……手に取ろうとしたその時
その人は笑みを浮かべたまま、私の吸引薬を手に取った。

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