【イナイレ】シッカーラプンツェル【不動明王】

◇ラプンツェルと少女 ページ27

不意に、女の子の声が聞こえた。
眠そうな女の子の声。

私は少しずつ光に慣れていく目で声の主を探した。


部屋の中は本当に狭くて、そこに2段ベッドが向かい合うように置かれている。それだけの部屋だった。

ベッドとベッドの間もさっき通って来た通路よりややや広い位で、ベッドの高さも凄く低い。
上半身起こしたら上に頭ぶつけちゃいそう。


病院の部屋より圧倒的に狭い……

ベッドだって、寝返り出来るスペースがあるのかさえも怪しい。


………もしかして、コレが部屋？
このベッドしかない此処が？



「何なの、急に……寝てたんだけど」



そんな部屋の右下のベッドで、もぞもぞと動く薄い掛布団。

そこからピンク色の頭が出て来て、寝ぼけ眼の瞳でその人は私達を睨んだ。



……目付きがフドウと一緒で怖い。
女の子なのに。美人さんなのに。

此処にはフドウみたいな人がいっぱいいるのかなぁ…ヤダなぁ……怖いなぁ……



「ルームメイトだ。世話よろしくな」

「はァ？ルームメイトォ？」



でも怖い女の子に臆する事なくフドウはそう言うと、親指で後ろにいた私を指差した。

途端に突き刺さる女の子の視線。
そんな視線、今まで向けられた事なんてなかったから、私はどうすればいいかわからず、身体が強ばってしまう。


とりあえず挨拶はしようと思って、私はぎこちない笑みを浮かべると小さな声で「よ、よろしく…」と小さく手を振ってみた。

だけど女の子は返事をくれないどころか、私を上から下まで睨むように見遣ってから、面倒そうに頭を掻いた。



「此処の事はあとはコイツに聞け」

「ちょっ…私に丸投げかよ！」

「ルームメイトとして仲良くしてやれよ。
じゃ、俺もそろそろ寝るわ」

「待てよ不動っ…！」



フドウはまた大きな欠伸をすると、女の子の話も聞かずにそう言って部屋を出て行ってしまった。

私の横を通り過ぎる時「明日からヨロシクな」と言われ
部屋の扉が閉められると、直後に女の子が大きな溜息を吐いた。



「ｯﾁ……あのハゲ、覚えてろよ……」

「……」



フドウが出て行った途端、気不味い空気が流れる。

でもとりあえず挨拶はしておこうと思って、私は勇気を出して不機嫌そうなその子に向けて自己紹介しようと思ったんだけれど……



「……あ、あの…」

「とりあえず、電気消して」

「へっ…？」

「そこの壁にスイッチあるから。

おやすみ」

「えっ、えっ…？」




……仲良くなる道のりは長そうだ。

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