◇ラプンツェルは弱虫 ページ9
キドウの握り締める拳が震えている。
そんなにも強く握り締めているんだろう。
…スペシャルゲストって、多分サクマとゲンダの事だよね。
2人は帝国学園に通っていたんだし。
でもそこはライモンに教えてないんだ。
本当なら会わない方がいいんだろうな。
だって今のサクマとゲンダは前とは随分違うから。
きっと、キドウの知っている2人ではないだろうから。
「………ありえない。
影山の汚さを身をもって知っている帝国イレブンが、アイツに従うはずがないっ…！」
現にキドウはフドウの言葉をすぐに否定した。
きっとあのまま変わっていないと思ってる。
本当は2人とも、キドウを倒したくて仕方ないって気付いていない。
教えてあげたい。今の2人の事。
言ってあげたい。『逃げて』って。
『会わないで』って。
あの2人に会っちゃったら、きっとキドウは悲しんじゃう。
あの2人が会っちゃったら、きっと2人は禁断技を使っちゃう。
そうしたら、2人は…………
「そうだ！絶対ありえない！」
「ヘタなウソつくんじゃねェよ！」
「はァ？だったら俺の目が可笑しいのかなァ？」
2人をよく知っているのか、ライモンの人もフドウの言葉を否定した。
でもフドウはわざとらしく鼻で笑いながら、ライモンの人に背中を向けて笑う。
……嫌だな。この雰囲気。
空気が重くて、ｷﾞｽｷﾞｽして、怖い。
とても私が口を開ける雰囲気じゃない。
弱虫な私は視線を落とす。
これ以上、ライモンの人の怒った顔を見たくなかった。
でも耳はちゃんと聞こえてるから、怒ってる声は聞こえちゃう。
「貴様っ…誰がいるって言うんだ、誰が？！」
「オイオイ…教えちまったら面白くないだろ？
着いてからのお楽しみさ」
ああ、もう。今だけはその意地悪な笑みをやめて欲しい。
ただただライモンの人を煽って、怒らせるだけなのに。
でも知っててやってるんだろうな。
フドウはそういう人だから。
結局そのまま私は一言も発する事無く
ライモンのバスに乗せられて、私の居場所である真・帝国学園へと向かった。
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