◇ラプンツェルは心配する ページ50
あの人の怪我の手当ても終わって、再び試合は始まった。
フドウに怪我をさせられて、交代するんじゃないかと心配していたけれど、あの人はその後もフィールドに立っていた。
でも無事だった事を素直に喜べなかった。
いや、寧ろ交代するよりも最悪かも。
だってあの人、腫れてる足を引き摺ってポジションに立っていたから。
つまり、足の怪我は治ってないって事。
しかも痛むんだろうな。
時々、サクマやゲンダ…とまではいかなくても、顔を顰めて痛そうにしてる。
あの人、無理してグラウンドに立っているんだ。
怪我をしている状態なのに、まだグラウンドに立っているんだ。
でも『大丈夫かな』なんて私が思うのは違うと思う。
だってアレは、私のせいでもあるんだもん。
フドウが言ってた。私が悪いんだって。
私が、私がさっさとシュートを決めなかったから。
途中でシュートする気も無くしたから。
だからフドウがあの人の足を潰して、サクマにまたシュートさせるって言ってた。
あの怪我は、私のせい……
だとしたら心配するのは可笑しいよね。
−−−
その後の展開は暫く膠着状態が続いた。
それもそうだよね。
だって前半と何も変わらない。
ゲンダも禁断技を使えるから、ゴールは狙えないし
かと言って攻め込まないとサクマにも禁断技打たれそうになるし。
相変わらずシュートはせず、サクマにボールが渡らないよう守りながら、ライモンは隙を伺う。
あの人の足が潰されなければ、或いはまた違った展開だったんだろうけど……
ああ、ダメだ。
あの人の事考えるとさっきのフドウの言葉まで思い出しそうになっちゃう。
「おぉらあああ！！」
私もサクマとゲンダを守る為にフィールド内をただ走っていたんだけど、再びボールをフドウは奪い、サクマに繋げようと動く。
しかしライモンは魂胆がわかってるから。
すかさず2人のライモンの選手がサクマの前に立ち、サクマにボールが渡らないように阻んだ。
「佐久間にはボールを出させない！」
「いい子ちゃんは引っ込んでな！」
茶髪の人がフドウを睨むと、フドウはおもむろにボールを片足で蹴って舞い上げる。
そうして丁度茶髪の人のお腹辺りに降りた所で、フドウはそのボールを正面に向けて蹴った。
当然、目の前にいた茶髪の人のお腹にめり込み、彼は少し後方に飛ばされてしまう。
ボールはそのまま、てんてんと転がって行く。
その先にはサクマが待ち構えていた。
まずいっ……！！
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