◇ラプンツェルはキレた ページ47
「…優しいんだな、お前」
「………えっ」
彼は足を引きずりながらも、私の前で笑ってみせる。
不意の言動に私は瞬きも忘れて彼を見つめると、その人はﾎﾟﾝﾎﾟﾝと私の頭を撫でながら、短く続けた。
「ありがとな、心配してくれて」
そう言うと彼は白髪の人と一緒に1度ベンチの方へと向かって行った。
その背中を暫く私は呆然と見つめていたけれど
ふと、思い出したかのように振り返ってフドウの方へ向かう。
その時の私の顔は怒ってたと思う。
だってタカナシ達とすれ違う時、凄く驚いた顔されたから。
「＿＿＿フドウッッ！！」
ベンチに先に着いていたフドウ。
私は拳を握り締め、そんな彼の名前を呼ぶと
途端に驚いた顔をして私の方を見遣る。
でもどうして呼ばれたのかはわかってないような、間の抜けた顔だ。
それが更に私の頭をｸﾞﾂｸﾞﾂと煮立たせる。
「うわ、ビックリしたー…なんだよ、急に。大声出して」
「さっきの話と違うじゃん！！
私が点を取ったら、サクマにシュートは打たせないし、ライモンは傷付けないって……！」
さっき、フドウは確かに言った。
私がシュートを5点取れば、サクマとライモンを傷付けないって。
なのにフドウは傷付けた。
わざとあの人の足を狙って、怪我をさせた。
私はフドウに問い詰めると、途端にフドウは面倒くさそうに頭を搔く。
ふぅ、と息を吐き、手にしていたドリンクをベンチの上に置くと、私に向き直り表情を改めた。
「……だから？」
「だから、って……！」
「だァって、先に約束破ったのはお前だろ？
俺が点取って来いっつったのに、いつまでも追加点取らないから」
「ライモンは強いチームだって言ってるじゃん！
それに守りも固めてたから、なかなか点取れなかったんだよ！」
「それだけじゃない。
お前、さっき雷門が点決めた瞬間、シュートする気無くしてただろ？」
「＿＿＿っ！！」
私の表情が強ばる。
まるで心の中を見透かされたみたい。
私は必死に首を横に振るけれど、フドウにはお見通しだった。
不機嫌そうに眉を顰め、私を見下ろすフドウの瞳。
威圧的で、まるでヘビのよう。
その鋭い眼光で私の頭の中を見られているようで、私は堪らずフドウから目をそらしてしまった。
そうしたらフドウは「そうだよなァ？」と笑う。
口端を釣り上げて、ﾆﾔﾆﾔ笑う。
まるで獲物を追い詰めた猛獣のように見えて
私は子鹿のように肩を震わせた。
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