◇ラプンツェルは道を譲る ページ43
「簡単には行かせねェよっ！」
そんな白髪の人にフドウは初っ端から突っかかる。
スライディングで正面からボールを奪おうとしたみたいだけど、白髪の人のパワープレイにより逆にフドウが弾かれた。
舞い上がったボールは怖い人が拾い、そのまま攻め込む。
………来るっ……！
「シュートは打たせないからっ…！」
「ｯﾁ…！」
私はそんな怖い人の前に立ちはだかり、道を塞いだ。
途端に怖い人は苦々しい顔をするけれど、仕方ないの。
ゲンダに禁断技を使わせるワケにはいかないの。
「打たせろ！」
「…！？」
なのに、それなのに。
フドウは立ちはだかって邪魔する私にそんな風に言って来た。
「シュートは源田が止める」
「そんな事したらゲンダはっ……！」
「大丈夫だ、A！俺なら止められる！」
シュートを決めさせたら、ゲンダが禁断技を使っちゃう。
フドウだってわかってるはずなのに、わざと打たせようとしてる。
ゲンダも何が大丈夫なの。
技を使ったら身体がボロボロになっちゃうの知ってるのに。
さっきだってソレで苦しんでたはずなのに。
「なァ、お前は佐久間と源田、助けたいんだろ？」
「……！」
フドウにもゲンダにも言われ、それでも私が動かないでいると、不意に怖い人が声を潜めてそう言った。
私は思わず顔を上げると、その人は真剣な顔をしたまま続けた。
「大丈夫だ、安心しろ。源田に技は打たせない」
「そっ、そんな事、出来っ子ない！ゲンダは技を打つ気満々なの！そもそも、打たせないってどうやって……！」
「頼む、信じてくれ！俺達は絶対に源田を傷付けない！」
「………」
じっと目を合わせられる。
さっきまでは怖くて合わせられなかったのに、この時だけは合わせられた。
ただ点が欲しくて言っている、って感じじゃなかった。
本当にゲンダに禁断技を使わせずにシュート出来る策を持っているような瞳。
根拠は無いし、成功するかもわからないけれど
私はその瞳を信じる事にした。
「……………わかった」
私はそっと、彼に道を譲った。
最早これは賭けだった。
本当にそんな事が出来るのなら、もうゲンダは大丈夫だ。
何をするかはわからないけれど……お願い。
どうか、成功して。
ゲンダに技を打たせないで。
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