◇ラプンツェルと後半戦 ページ42
「……」
1度、私は視線をフドウに向けた。
フドウはただ黙って私の言葉を待っていた。
怒るでも、止めるでも、笑うでもなく
ただじっと、私を見つめて目を細める。
私はｷｭｯと口を1度引き結ぶ。
ああ、本当に私は悪者になっちゃったんだ。
これはもう、王子様は迎えに来てくれないな。
でも私は口を開くと、間を空けてからハッキリと口にした。
「……………ごめんなさい」
「…！」
……案の定、キドウは驚いた顔をした。
期待、されてたのかな。
だとしたら本当に申し訳ない。
でもその言葉を告げた途端、フドウの口角が微かに上がった。
「私、此処が好きなの。酷い所かもしれないけれど……好きなの。
今更、私だけキラキラした所になんていけない。
そんな事したら、きっと私は雪の女王みたいに溶けて消えちゃうから……」
「……」
「残念！フラれちゃったねェ、鬼道クン？
どーやらお前にはコイツの王子様役は務まらないらしいぞ？」
私の答えにキドウは私の肩から手を下ろす。
そしたら代わりにフドウが私の肩に手を置いて
またバカにするようにﾆﾔﾆﾔしながキドウに言った。
振り返るのが…怖い。
キドウ、どんな顔してるかな。
やっぱり、悲しい顔してるのかな。
キドウに背中を向けてるから、わからない。
でも見なくても良かったのかもね。
「……行くぞ、黒井」
「…うん」
そのままフドウに言われ、私はフドウについて行ってグラウンドへと向かった。
後に残されたキドウの方は、1度も振り返らずに。
−−−
グラウンドに戻って少ししたら、後半戦が始まってしまった。
サクマとゲンダはやはり禁断技を打つ気らしい。
目が血走ってて、少し怖かった。
でも、あと半分……これを乗り切ればもう大丈夫。
この間にあと4点、私がとってしまえばサクマはシュートを打たないで済む。
「集中……しないと」
ホイッスルが鳴り響く。
後半戦が始まった。
ボールはライモン。あの白髪の人がボールを持って果敢に攻め込もうとする。
その姿はさっきコンビニで話し掛けて来た時とは全然違う。
好戦的で強気で、先程のおっとりした感じとは真反対な雰囲気になっていた。
な、何この人…？！前半はまだおっとりしてたのに。
FWになったから…かな？
さっきまではDFだったけど、後半は一気に前に出て来た。
いや、それにしたって変わり過ぎじゃない……？
まるで別人みたい。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 100人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
