◇ラプンツェルと価値観 ページ40
「貴様っ…！！」
キドウも声のした方を振り返り、途端に敵意剥き出しの表情でフドウを睨む。
でもフドウは少しも気にせず、寧ろ鼻で笑うと
ニヤニヤしたまま、わざとらしく続けた。
「いやァ、ウチのチビがいねぇなって思って探してたら…まさか、あの鬼道クンと一緒にいたとはなぁ？
一体2人で何の話してたんですか？
もーしかして……雷門に寝返るって話とか？」
「っ……」
視線をキドウからズラし、私の方を見遣る。
そうして蛇のように目を細めるので、私は思わず肩を震わせた。
……もしかして話、盗み聞きしてたのかな。
ううん、あの顔は絶対してたって顔だ。
「いや、別に構わないケド？寝返ってもらっても。
こっちの戦力大して変わらないし？
ま、そーなったら…しょうがないから、佐久間にシュート打って貰うかぁ」
「貴様っ……！」
「おーおー、怒っちゃって、怖いねぇ……
つーかコッチの話なんだから口出ししないでくんねェかな、鬼道クン？」
「気安く呼ぶな！」
わざとからかうようにそう言うフドウに対し
キドウは声を荒らげる。
さっきまでは普通に話してたのに…
寧ろ、サクマやゲンダと同じで優しかったのに。
その時のキドウは怖かった。
「佐久間と源田を利用し、あまつさえ身体の弱い彼女をも巻き込む外道……貴様は何処まで人を利用すれば気が済むんだ！？」
「……」
「元チームメイトだろうが、病人だろうが、使えるモンは使う。それだけさ。
俺には勝たなきゃならない�猴�由�瓩�あるからな。
それに、そこのチビは喜んで利用されてたぜ？
まるで従順な犬みたいにさ」
「そこまでして手に入れる勝利に何の価値がある？！」
「価値…？面白い事言うねェ、鬼道クン。
価値も何も勝ちは�狆，銑瓩澄�それ以上でも以下でもない。
勝利こそが正義で、敗北はその逆。
勝つのは力の表れで、強いんだ。
つまり、強い方が偉いんだよ」
「っ……っ……！」
話を聞いていて、この2人は一生分かり合えないんじゃないだろうかと思えた。
フドウは目的の為なら何でも利用する。
例えソレが原因で誰かが不幸になってしまっても。
でもキドウは違う。
誰かを利用しようとしたりしないし、ただ勝つ事だけを求めてもいない。
まるで勇者と魔王ぐらい、分かり合えそうにない。
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