◇ラプンツェルの懇願 ページ39
「でも本当は試合の事なんか、もうどうでもいい。
ただ、2人にはこれ以上苦しんで欲しくないの。
だから、ズルいかもしれないけれど…お願い！
これ以上の試合はやめて欲しいの！」
なんて言われるか少し怖かったけれど、意を決して私はキドウに告げた。
確かサッカーって試合を途中で辞める事も出来るんだよね。
その場合、辞めるって宣告した方の負けになっちゃうけれど……でも、2人の事を考えたら頼まざるおえなかった。
でもキドウは私のお願いに苦しそうに顔を歪ませた。
そうして視線を1度落とし、再びあげると静かに答えた。
「……無理だ」
「なっ…なんで？！確かに勝敗も大切かもしれないけれど…！このままじゃ、サクマとゲンダはっ…！」
「最初は俺も棄権しようとした。
だが監督からの指示で、この試合どうしても勝たなくてはならなくなった」
「そんな………」
返って来た返事はまさに、1番返されたくなかった最悪の答え。
試合をこのまま続ける上に、ライモンも本気で勝ちに来る。
今まで以上にゴールに行くのが難しくなるだろうし
最悪、ゲンダもまた技を使うかもしれない。
それに点が取れないとなるとフドウがまたサクマにシュートさせるかもしれない。
フドウも勝ちたいだろうし、その為なら何だってやる。
フドウはそういう人だから。
「………じ、じゃあ……せめて、あと4点取らせて」
「何…？」
「フドウが言ってたの。5点取らないと、サクマに打たせる、って……
だから、あと4点……4点取れば、サクマは安全なの……だから、お願い……」
「……」
自分で言っていて、我ながら酷いと思った。
フドウと一緒に良すぎて、私は心も悪者になっちゃったみたい。
わかってる。そんな無茶なお願い通らないのは。
キドウだって今言った。この試合、負けられないんだって。勝たなくちゃいけないんだって。
わかってる。わかってるよ。
でもこうしないと、サクマは………
「＿＿おっと、こんな所で会うだなんて奇遇だねェ？」
「っ…？！」
不意に、今会いたくない人の声が通路に木霊する。
思わず顔を上げると、キドウの背後にはいつの間にかフドウがニヤニヤしながら立っていた。
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