◇ラプンツェルは悪者 ページ30
「ああああっ！！」
開始早々、私はボールを勢い良く怖い人から奪うと、そのままライモンゴールまで真っ直ぐに向かって行った。
ライモンの人は驚いてたみたいだけど、すぐに彼等は私を止めようと向かって来る。
やめて、来ないで……！
そう心の中でどれだけ願っても、茶髪の人は私の前に立ちはだかった。
「キミは彼等とは違うと思ってたんだけどな…！」
「来ないでっ！お願い、私に点を入れさせてっ…！」
「そうは言われても…僕達だってそう易々とゴールを決めさせるワケには行かないから！」
「っ…」
茶髪の人から何とかボールを庇いながら、私は訴えるけど、彼は引き下がってくれない。
サクマとゲンダは守ってくれるけれど、だからって試合に負けるつもりも無いみたい。当たり前なんだろうけれど。
私は思わず歯を食いしばると、意を決して1度彼から身を引いた。
そうして私は彼にわざとボールを渡すと、茶髪の人は大きく目を見開いた。
「えっ……？」
「……ごめんなさい」
緩く弧を描いたボールを、彼は反射的にトラップしようとした。
だが次の瞬間、そのボール目掛けて私は蹴りを入れる。
勿論、ボールを受け取ろうとした彼が反対側にいたから、ボール越しにお腹を蹴ったも同然。
茶髪の人は直後に乾いた呻き声を出して、身体をくの字に曲げた。
…ごめんなさい。
本当はこんな技、使いたくなかったの。
でも、ライモン相手にボールを持ったままゴールまで向かえる自信が無かったから。
5点シュートを決めないと、ライモンが傷付くから。
だから、ソウスイに教えて貰った技を使うね。
『ジャッジスルー2！！』
その後も私はボールに何度も蹴りを入れた。
何度も、何度も、何度も、何度も。
勿論、茶髪の人はボール越しにソレを全部受けて、最後の蹴りで突き飛ばすと、彼は地面に倒れ伏せたまま、動かなくなった。
…やっぱり痛いよね、絶対。
いや、痛いなんてモノじゃない。
人に向けて打ったのは初めてだけど…
やっぱりソウスイから説明された以上に酷い技。
こんな技をライモン相手に披露するなんて……
いや、どんな人間が相手であれ使いたくなかったのに。
「わっ…私の邪魔をするから！こうなるんだよ！」
そんな私にとっての最低の言い訳。
何度もそうやって相手のせいにして、私は再びボールを蹴り始める。
ああ、こんなんじゃお姫様になんかなれないよね。
だって今の私も、フドウと同じで悪者だもん。
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