◇ラプンツェルは脅される ページ29
「…だ、大丈夫だもん。サクマは私とライモンの人が守るもん」
サクマを人質に取られた感じで、思わず頷きそうになったけれど、ｸﾞｯと我慢。
ライモンの存在を思い出し、私は震える声でそう告げると、フドウは一瞬、面白く無さそうに冷たい瞳で私を見遣る。
だが直後にまたﾆﾔﾘと微笑むと「ああ、そう」と目を細めた。
そうして、おもむろに視線をズラし、ライモンのキーパーの人を見遣る。
「…じゃ、アイツにするかァ…」
「…？何をするの…？」
「ん〜？何って決まってんだろ？潰す相手」
「つっ……？！」
まるで悪戯を考えているかのような表情で、残酷な事を口にしたフドウ。
私は思わず目を見開くと、フドウは視線を動かして別のライモンの選手を見て、また笑った。
「ああ、それともアイツにしようかなぁ…？
アイツも潰し甲斐ありそうだし……ああ、あの女の子もイイなぁ……選り取りみどりで困るなァ？」
「なっ……な、何、言ってるのっ…？！」
次々に視線を動かして、フドウはわざとらしくターゲットを選ぶ。
本当にフドウは意地悪な人だ。
おとぎ話の世界なら、間違いなく悪者中の悪者中。
眠れる森の美女に出て来る悪い魔女だよ。
私は咄嗟にフドウの腕を掴んで訴えると
逆にフドウは私を肩を掴んで、私の耳元で低く呟いた。
「じゃあ、さっさと点取って来い。
完膚無きまでの勝利を見せつけてやれ。
いいか？ちゃんとやらねーと誰が傷付くか分かんねーからな？
それに、これは
「わ……わ、かった…わかった、から……
だから、お願い……もう、これ以上傷付けないで……」
私は震える声で懇願すると、フドウは私の耳元から離れてまた嗤う。
「ガンバレ」と軽く手を振りながら軽い感じに言って退けるが、今の私にとってその言葉はまるで鉛のようだった。
……て、点を取ればいい。それだけ。
そうすれば、ライモンの人は傷つかない。
サクマとゲンダも傷つかない。
何が私の為になるのかはわからないけど。
でもライモンと2人の為になるのは確実だから。
だから。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 100人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
