【イナイレ】シッカーラプンツェル4【不動明王】 (ページ28)

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◇ラプンツェルの束の間ページ28

でもその後の試合展開は、意外にも私の理想に近い形となった。
だってライモンがサクマにボールが渡らないようにしていたから。

きっとキドウがそう指示したんだろう。

さっきから何度もサクマにボールが渡されそうになるけれど、その度にライモンの皆が何重にもブロックして、ボールを奪ってる。サクマを守ってくれている。

サクマだけじゃない。ゲンダもだ。
ライモンは何度かシュート出来るタイミングがあったのに、シュートせずにボールを他の人に回していく。

良かった……これなら2人が禁断技を使う事は無い。
そうなれば、あとは試合が終わるのを待つだけ。

得点が0-1で私達が勝っちゃってるし、なんだかズルい気がするけれど……

「あーあ…つまんねーの」

でもフドウはそのせいで、さっきからずっと不機嫌そう。
自分の思い通りに事が運ばないからイラついてるんだ。

それとも、さっきからサクマの代わりにシュートしてるのに全然入らないからかも。

でもサクマとゲンダの身体の方が大事だもん。
それにこっちが勝ってるんだから、そんな腹立たなくてもいいのに。

そんなにサクマとゲンダを壊したいのかな。

「……おい、黒井」

「っ……？！」

そんな事を思いながら、私はフドウを横目で見ていたら、不意にフドウが私に声を掛けた。

一瞬、自分の心が見透かされてるのかと思って肩を震わせたけれど、恐る恐る返事を返すとフドウはこんな事を言い出した。

「お前、点を取って来い」

「……へ？」

「そうだなァ……5点でいい。カンタンだろ？」

「へっ……？！」

…何を言い出すのかと思いきや。
随分と簡単に言うんだね。

でも、それを完遂するのは無謀な話だ。
だって相手はあのライモンだよ？

そのライモン相手に5点……？
私が？1人で？5点も……？

「むっ…無理だよ」

「ムリじゃねぇ、やるんだ。
でないとサクマにシュート打たせるぞ」

「……っ」

素直に無理だと伝えたら、フドウはﾁﾗﾘとサクマを見遣る。

サクマはまるで全力疾走した直後のように息が切れていて、苦しそうだ。

あの技を打ってからずっとああなの。
でも決して疲労からの荒息じゃなくて、痛みに悶えて抗っているんだろう。

なんだか歩くだけでも辛そうだし……

もしかしたら、立つのさえやっとの状況なのかも。