◇ラプンツェルのショック ページ17
「っ……？！」
「……」
……サクマが、キドウの手を弾いた。
肩に置こうとしたキドウの手を、サクマが引っ叩いたのだ。
その時の瞳は酷く冷たく、まるでキドウを蔑んでいるかのような顔をしていた。
私は思わず両手で口を覆う。
今見た光景は、あまりにもショックだった。
だって、だってサクマはキドウの事を本当に尊敬していて。していたはずなのに。
ゲンダだって。『キドウは帝国学園の自慢だ』って笑ってた。そう言ってたはずなのに。
力を、強さを追い求めてしまうと、人間はこうも変わってしまうのだろうか。
強くなったら、力を手に入れたら、どんなに優しい人でもこうなってしまうのだろうか。
……………私も、こうなってしまっているのかな。
「………」
サクマにそんな事、されたことなかったんだろうな。
キドウは少しの間、放心状態だった。
「………あの時、俺達が病院のベットの上でどれほど悔しい想いをしたか……お前にはわからないだろう」
「動けないベットの上で、俺達がどんな想いだったか……」
そんな彼に続けて告げる。
今までのサクマとゲンダに燻っていた想い。
私も知らなかった。
だって2人は私が来ると、いつも笑顔で迎えてくれていたから。
そうしていつも、私がせがむと帝国学園の事を嬉しそうに話してくれたから。
2人は……最初から、そう思っていたの？
私と初めて会った時から、そんな風に思っていたの？
キドウの自慢話をしていた時も、ずっと？
「雷門イレブンに入り勝利を掴んだお前には…絶対わからない」
「お前には勝利の喜びがあったろうが、俺達には敗北の屈辱しかなかったんだよ！」
怖かった。
もう、2人が今までのように見れなくなった。
まるで目の前の人が、サクマとゲンダによく似た知らない人に見えた。
「そんな言い方ないだろ！
鬼道はお前達の為にもゼウスを倒そうって…！」
2人の言い方に流石の雷門のキャプテンも口を挟んだ。
きっとキドウはキドウで考えていたんだろうな。
でもその話は他ならぬキドウによって遮られた。
そうしてキドウは1歩、2歩。サクマとゲンダに歩み寄る。
2人の前に立つと、鬼道はそのまま2人に向かって頭を下げた。
「……すまなかった」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 100人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
