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「ごめん、チサ」
「ゆっくり休んで。疲れが出たのよ、先輩たちも言ってたでしょ」
「ありがと。あのね、残りの仕事、デスクにね、」
「分かってるから。いまは自分の体のこと、ね」
チサも私もまわりに話したわけじゃないのに、なんだか部署のだれもが体調不良に気づいていて。
まだ日も暮れない明るい午後に、勝手に早退が決まっていた。
あれよあれよと仕事をうばわれ、コートとマフラーを手に持たされていて。
上司からも、もう今日は仕事はないぞ、帰った帰った、と笑顔で追い出されて。
気づけばロビー玄関に寄せられたタクシーに乗せられて、チサに見送られていた。
「ね、一人で帰れる？」
「うん、大丈夫。タクシーだから」
「帰ったらちゃんとメールしてね」
「うん、ごめんね。…こんなぜいたく、はじめて、」
チサが気をきかせて寄せてくれたタクシーにもたれる。
行き先の住所まで伝えてくれて。
ぜいたく、って言葉に笑ったチサに、ひらひら、と手を振ったらタクシーが出発した。
ぼんやり外を眺めながら、ああ、翔さんに会えそうにないな、って思ったら、ふいにかなしくなって。
涙があふれそうになるのを我慢しながら、緑のアプリのメール画面を開く。
「翔さん、ごめんなさい。
今日、チサと飲みに行くことになって、会うの明日でもいいですか？」
ぼんやりした頭の中で考えた、せいいっぱいのうそ。
隠し事したらうそもつかなくちゃいけなくなって、かなしくなる。
よかれと思ってしたことや悪気がなくてしたことで、胸がこんなにちくちくするなんて。
家に着くころになって、携帯がふるえる。
相手はもちろん、翔さんで。
「えー！まじか！
めっちゃ楽しそうじゃん！
楽しんできたまえ(笑)」
メールをデスクの下からそっと打つ翔さんを思い浮かべる。
それと同時に、ちょっとへこんでる翔さんも浮かんできて。
なんだかそれを思うと、自分の気持ちも落ちて。
ごめんなさい、と思えば思うほど、胸が痛む。
マンションのそばで、大丈夫ですか、なんてタクシーの運転手さんに心配されて、お礼を言って降りる。
メールで翔さんに謝れば、気にすんな、明日こそな、そんなんでへこまねーし怒らねーよ、だなんて。
優しくされればされるほど。
うそをつけばつくほど。
つらくって。
風邪より、熱より、つらくって。
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なつめ(プロフ) - 理子さん» コメントありがとうございます＊あたたかいお言葉、丁寧に読ませていただきました。そのように言っていただいてとてもうれしいです。何度も読み返してくださっているなんて、恐縮です。今後のお話作りの励みになりました＊ありがとうございました！ (2016年1月23日 21時) (
レス) id: a5481c8374 (このIDを非表示/違反報告)
理子 - 今更でごめんなさい。気付かれないかもしれないですが、このお話大好きで何だか心が疲れたなって時に何回も読んで癒されています。キュンキュンして、良い意味でゾワゾワします、翔さんがかっこよくて。恋がしたくなります。こんな素敵な話をありがとうございます！ (2016年1月19日 2時) (レス) id: 76c69858b8 (このIDを非表示/違反報告)
なつめ(プロフ) - 朔さん» ありがとうございました、完結いたしました＊ついつい切なくするクセがあるので不安にさせてすみません（笑）きゅんきゅんをたくさんお届けできたようでよかったです！また次もがんばります＊ (2015年10月25日 21時) (レス) id: a5481c8374 (このIDを非表示/違反報告)
なつめ(プロフ) - さくさん» お返事遅くなりました、すみません( ´ ` )ありがとうございます！なんとか終えることができました！そんなにお話を愛してくださって恐縮です！足りない部分も足したい部分もたくさんあるんですが、そのように言っていただけてとても励みになりました＊ (2015年10月25日 21時) (レス) id: a5481c8374 (このIDを非表示/違反報告)
朔(プロフ) - 完結おめでとうございます！この日を待ってました！リアルな不安だったり、ちょっと甘酸っぱかったりで、イケメン翔さんに沢山キュンキュンさせていただきました//お疲れさまでございました(*^^*)チサと潤話も楽しみです♪ (2015年10月24日 6時) (レス) id: 29cb325351 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なつめ
| 作成日時：2015年2月9日 0時
