プロポーズは日常の中に➁ ページ8
「…ねぇAちゃん」
「な、なんですか？」
「もし君さえ良かったらなんだけど」
そこまで言って、彼は一呼吸置いた。その時間はきっと数秒なのに、私にはすごく長く感じる。ごくりと固唾を飲み込んだ。自分が喉を鳴らした音と、緊張して早くなった胸の鼓動が鮮明に聞こえる。
「結婚、しない？」
「…え？」
自分でも笑ってしまうほど、か細い声が漏れた。目の前の彰さんは少し不安げで、でも照れくさそうに頬を掻く。てっきりもっとマイナスな事を打ち明けられると思っていた私は、予想を反するその言葉に驚きを隠せなかった。
「この頃、よくこれから先のことを考えるようになったんだ。…付き合ってるだけってやっぱり不確定だなって感じ始めてさ」
「もっと君と強い繋がりが欲しいって思うようになっちゃった。一緒にいてあまりにも心地いいからさ。
今更って、君に言われたらそれまでだけどね」
彰さんはゆっくりと目を伏せた。激しく脈打っていた自らの心臓は、徐々に落ち着きを取り戻していく。
「…正直、予想外です」
「だろうね」
でも、答えはひとつしかない。大きく息を吸って息を整えた。
「意識したことはありました。けれど仕事のこともあるし、結婚願望も薄くって。
でも、彰さんと過ごすにつれて、彰さんとだったら…って思うようになりました」
「あなたといるのが、一番落ち着くんです。なのでその、…私もしたいです、結婚」
最後、笑いかけたつもりだったけれど、ちゃんと笑えていただろうか。そう考えた瞬間に全身が体温で包まれた。動揺のあまり彼の名前を呼ぶ。どんな顔をしているのか知りたくて身を捩る。
「あっあきらさ…」
「ごめん、抱きしめていい？…もうしちゃってるけど。…こんなに、大切な人と結ばれることが嬉しいだなんて知らなかった」
そんな事言われたら抵抗出来なくて、大人しく彼の腕の中に収まった。大切な人、心の中で反芻する。じんわりと共有される体温と共に、なんとも言えない温かい気持ちが胸から湧き上がってきた。
「ふふ、わたしもです。…これで私も石田になるんですね」
「なんかしっくりこないような気もするな…」
「そうですか？私は結構気に入ってます。お揃いですね」
「…可愛いこと言うんだね」
彰さんはまた照れくさそうに、どこか眩しげに目を細める。
日常で、でも新しい日々が静かに幕を開けた。
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poco(プロフ) - 嬉しいです🥹待ってます😆 (1月10日 1時) (
レス) id: 7086e430c4 (このIDを非表示/違反報告)
藤野(プロフ) - pocoさん» ありがとうございます！深夜のテンションで書ききっていたので不安だったので嬉しいです笑 続きができたらまた投稿しますね😚 (1月10日 1時) (レス) id: 4ec9f1e3da (このIDを非表示/違反報告)
藤野(プロフ) - ももさん» コメントとリクエストありがとうございます☺️子育てのお話は少し時間がかかるかもしれませんが、書かせていただきますので少しお時間いただけたら幸いです！ (1月10日 1時) (レス) id: 4ec9f1e3da (このIDを非表示/違反報告)
poco(プロフ) - ラジオでの惚気ネタめちゃくちゃ面白いです！続きもぜひ見てみたいです！ (1月10日 1時) (レス) @page40 id: 7086e430c4 (このIDを非表示/違反報告)
もも - お子さんとのお話とっても好きです！もし宜しければまた続きがあると良いなぁと思っています……！🥺✨ (1月8日 22時) (レス) @page7 id: aa51dc45d1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：藤野 | 作成日時：2023年9月4日 2時
