おもちゃ箱〜短編集〜

コーヒーが好きな理由 3 ページ7

…………………………

「…うう…それは苦労なさったんですね…！！」
「…はい…」


あれから市松家へお邪魔した私。
こひなちゃんは学校、信楽さんは…聞いたら死んだ目をされたから、察することにした。


「そうですか…私と別れてからそんなことが！！その場についていられなかったのが惜しいです…ですが！この私と巡り会えたのだから安心してください！！ちゃんと24時間体勢で！！主人を！！守って！！差し上げま「うっせえよこの変態ィィィーーー！！！」ぐはっ！！」

目の前で繰り広げられるそのやりとりが、どこか遠く聞こえる。

クロとの思い出が消されて行く気がして、また溜め息。


…そんな時。
ガララ、と玄関が開けられる音がした。

「ただいまなのです」
「こひな！！お帰りー！！
Aさんはここにいてください」
「あ、はい…」

狗神さん…クロは、今も上機嫌で私の隣に座っている。

「…クロ？
こひなちゃんのところに行かなくていいの？」
「…何を言っているのでございましょう？確かにこひな様のことは愛しておりますが、五年も探し続けた主に勝るものはありません」
「…探してくれてたの？」
「もちろん！こひな様のストーカーの間に、クソ狐との散歩の間に、こひな様のストーカーの間に…」
「………………」


二回も『ストーカー』言ってるじゃん、と目で訴えるように見る。
…けれど、そのニコニコした顔に、まぁいっか、という気持ちになった。

コーヒーが好きな理由 4→←コーヒーが好きな理由 2

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す