小さな危機の話 9 ページ25
「それは……？」
「…開けてみて。君への…プレゼントだから」
「…………」
…手渡された小さい箱。
彼から私に贈り物、なんて、案外珍しい。
誕生日でも、クリスマスでも、何でもないのに。
「…これ、って……」
…箱を開けて、一番に目に入ったのは、あまり大きくはないが、キラキラと光る宝石。
それは、確かに今まで話題になっていた指輪で間違いなかった。
…私が悲しみも忘れて彼の顔を見ると、少し照れ臭そうに、それでもまっすぐに私を見つめてくれていた。
「アレン…これって」
「うん。…これは、最初から君に送ろうと思って買ったんだ。
ミカエラにはただ付き合って貰ってただけなんだよ。…僕は、女性の喜ぶアクセサリーなんてわからないから」
「で、でも…別にエルフェゴートまで行かなくったって」
…何故か、そう言い募ってしまう。
それが本当なら、悪いのは誤解をしてしまったこちらだし、浮気じゃなかったなら私だって勿論嬉しい。
…もしかしたら、ただの嫉妬なのかもしれない。私に内緒で、他の女の子と会ってたことに対しての、つまらない嫉妬。
…だけど、そんな醜い感情も、次のアレンの台詞で吹き飛んでしまった。
「だって……君が身に付けるものだから、何より綺麗なものじゃないと釣り合わないと思ったんだ」
「…っ！」
…そんなきざな言葉、どこで覚えてきたのか。
既に顔の赤い彼と同じように、私の顔もじわじわと熱くなる。
「…ア、レン」
「…本当に、不安にさせてごめん。
それでも、君に受け取って欲しいんだ」
「……うん…」
もう一度ぎゅっと抱き締められて、安心したせいか体から力が抜ける。
私もおずおずと彼の背に手をまわすと、ぼそりと彼が私の名を呼んだ。
「…ユリア……僕は、ただのしがない召使でしかない」
「…うん」
「…だから、僕と君の間には障害が多くある」
「……うん」
「…だから、この指輪は僕の誓いの証なんだ」
…しんと静まり返った室内。
私と彼の心臓の音しか聞こえず、まるで世界に私達二人しかいないような錯覚さえ覚える。
彼の声がなぞる言葉の続きに、そっと耳をすませた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 17人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
光華(プロフ) - 銀魂の土方十四郎で激裏お願いしても良いですか？ (2019年11月24日 21時) (
レス) id: 9f1b40bb10 (このIDを非表示/違反報告)
ノワブラ-α(プロフ) - 幽遊白書の幽助の激裏お願いしますね (2018年9月1日 14時) (レス) id: cf6ea17fd6 (このIDを非表示/違反報告)
サーシャ - 智美さん» 完成しました！ お待たせして申し訳ありません…犬夜叉、るーみっくは大好きです！！ (2018年6月3日 17時) (レス) id: 2ec897ff99 (このIDを非表示/違反報告)
nebula - 調べたらすぐでます〜 (2018年2月6日 2時) (レス) id: 4fd0305776 (このIDを非表示/違反報告)
nebula - あ、言い忘れていましたが妖怪です (2018年2月6日 2時) (レス) id: 4fd0305776 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：サーシャ | 作成日時：2017年1月22日 10時
