おもちゃ箱〜短編集〜

小さな危機の話 5 ページ21

…私は、マリアムとエルルカからの報告を聞いていた。


足元に跪いて諜報結果を述べるマリアム。
それは決して珍しい光景では無かった。
リリアンヌに代わって政治のことや各国との貿易のことをとり行う中で、彼女の諜報の能力がどうしても必要な時は多くあったのだ。

…その時と大きく違うのは、ここが音の間でも鏡の間でも無く、私の自室だということ。


私の部屋に、マリアムにリリアンヌ、レオンハルト、ネイとシャルテット、リリアンヌまでが集まっての小さな報告会。
…報告の場が私の部屋なのは、何てことはない、報告の内容がそれで充分なものだったからだ。



…三英雄が一人、マリアム＝フタピエの諜報能力を、よもや色恋沙汰に使ったのなんて、後にも先にも私とリリアンヌくらいだろう。

…はた迷惑な恋愛については、私もリリアンヌといい勝負なのかもしれない。



「…報告は、以上です……」
「そう……」
「…じゃあ次は、私からの報告ね。
ミカエラに聞いてみたけど…返事は『秘密です』らしいわ」
「そう…、わかったわ、ありがとう、マリアム、エルルカ」


…少し目眩がして、私は近くにあった書き物机に手を着いた。

リリアンヌやシャルテット達が色々と言ってくれているのがわかるけれど、今はとにかく一人になりたかった。





…『アレンと緑の娘が、一緒に指輪を選んでいた』だなんて、信じたくなかった。



ーーー…アレンは今日も、エルフェゴートに出掛けている。

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