死神の師匠が来た (ページ14)

今日:14 hit、昨日:2 hit、合計:17,659 hit

互いの境遇ページ14

彼女は、身体の泡をぬるま湯で流した。
それから、彼女は湯船にゆっくりと浸かる。
私の隣に、続きを話に来た。
「私は、音楽に全てを懸けていましたわ。それは、好きだからというよりも、認めて貰いたかったからですのよ」

「認めて…？一体、誰に？」
父上にも母上にも愛されていたんじゃないのか？
「私の母上は上級貴族で、よく社交界に出ては、会話を楽しむのが好きな人柄でしたの。父上は、政治家で忙しさを増すばかり……」

「そんな時、私は父上に音楽の道を教えられたのですわ。でも、決してそれは愛情ではない」

そうか。そうだったのか、とやっと理解する。
彼女は、愛情こそ受けておらず、それを埋めるため、貪るように音楽に浸っていたのだ。
そして、だからこそ彼女は、感情的に音楽に励める。

まるで、私とは別だが……
意味は違えど、【愛に飢えている】のだ。
だが、何故だろう。
彼女からは、微塵も悲しみは感じられない。

「ここに来て、心変わりしたのか？」
彼女は、にっこりと笑った。
「皆さんには、本当に感謝していますのよ」

彼女の笑みは、とても温かい。
この風呂を出ても、そう思えるほど＿＿