死神の師匠が来た (ページ13)

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健気な彼女は音楽家ページ13

「ふぅー。風呂は、凄い気持ちいな……」
体力的回復とともに、心も癒しを受ける。
女性陣に誘われ、風呂に入った。
「ふふっ……あら、おきに召して？」
一人の美人な女性がこちらの言葉に反応した。
彼女は、貴族育ちで音楽家。
恵まれた環境の中で育ったらしい。
言葉使いもそこらの軍人とは違い、いつでも柔らかい口調だ。
「ヴィオレッタ、だったか。この間の演奏、とても良い音色だった。どんな楽器でも、ああやって完璧なのか？」
少し聞いてみた。
彼女は、とてもその質問に驚いていたが、自分自身でも彼女以上に驚いていた。
何故、こんな他愛ない会話を切り出したのか、不思議でならない。一時の気の迷いか……？
「ええ、まぁ。そこらの楽器なら、父上に教わり、大体は……でも、どうして？」
凄いな。と、思ったのはここだ。
彼女は、ピアノ一筋だと思っていたが、流石貴族だ。
「いや、私も何となく聞いたんだ。……凄いな」
随分と父上に愛されていたのだろう。
少し羨ましくなった。
確かに、私も愛されている。
が、それはあくまでも彼しか世話を見る親がいないからであり、仕方ないからだ。

「ふふっ…凄くはないですよ？」
彼女は、そう言って苦い笑みを浮かべた。