レモネード・アドレセンス【宮侑】 (ページ10)

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正解なのに不正解。
俺自身、きっと説明しろと言われたら説明出来ないけれど、何となくその言葉の意味を理解することが出来た。

「私も信介も部長になったやん。それがいいことやって分かってた、誇らしいことやって。でもその分、他のことが疎かになる。……勉強、部活、バイト、恋愛。要領の悪い私には、全部を大切にできひんかった。それを信介は見抜いとってん。いくら好きでも、負担になってるって。やのにあいつ、如何にも自分のせいです、みたいな顔しよる。……腹立つわ」

「自分のせいやのに、相手に気ぃ遣わせた」

「そ。…………『俺要領悪いからAのことまで構ってやれん。お互い部長っていう立場が出来て、更に部活に力入れなあかんくなった。俺はその与えられたものをちゃんと大切にしたい。』それでなんて言うたんやったっけ…………えー……あ、そうそう。『すまんA、お前を蔑ろにしたない。辛い思いも、我慢もさせたない。やから別れてくれ。それがお互いのためなんや』って。重たい女やって思われたないからええよって言うてん」

アホやろ、と辛そうに笑う彼女が居た。

あぁ、あなたは愚かだ。
あなたは自分で思っている以上に愚かだ。
言ってやるものか。俺を傷付けている自覚が無いあなたには言ってやらない。

「まぁ、実際信介の言うたことは正しかった。私、ふと思った時があってん」

「……」

「信介と別れててよかったって。……最低よな」

「…………俺は先輩を最低なひとやなんて思ったことありません」

「そっか。ありがとう」

「っ！」

溢れそうになった。
彼女への好意が、抱きしめたいという欲望が。

彼女の弱さにつけ込んでしまいたい。
そう思ってしまう俺の方が最低なのだろう。

「ん？……あ、雨降って来よった」

星奈先輩の声で空を見ると、小さい粒が降りて来ていた。
それはコンクリートを濡らし、俺の気持ちもブルーにした。

「宮はまだ自主練するん？」

「はい。傘持ってきてへんし、弱まったら帰ります」

「梅雨やねんから持ってきとかなー。私のでよかったら入れたげる」

彼女は無駄に明るく振る舞うが、俺には虚しさしか伝わらなかった。