レモネード・アドレセンス【宮侑】 (ページ9)

今日:7 hit、昨日:5 hit、合計:28,760 hit

．ページ9

「別にブス、いやブスか、ブスやな。デブやなかったけどブスやってん。変わろう思たんは信介好きになって、信介の隣歩いても恥ずかしくない女子になったろ！って。それが1年の冬休み前な。そっから冬休みは、とりあえずダイエットしてメイクの勉強してん。その苦労あってか、めっっっちゃ垢抜けてん」

「そんな？」

「そんな。……冬休み明けてからは至って平凡に過ごして、2年になったタイミングで髪染めてメイクも学校にしてくるようにした。可愛なった私をイチから見てもらおって。あわよくば向こうが私のこと忘れて初対面偽りたかってんけどなぁ」

「無理やったんですか？なんで？」

「『髪染めてメイクしても星奈さんは星奈さんやろ』って。余計惚れたでほんま。そっから何か距離縮まって、ていうか縮ませたんよ。……あー…………こんぐらいかな多分」

「？」

「付き合(お)うたん。多分、こんぐらいの時期やった気がする」

哀愁を帯びた瞳から透明なそれが溢れてしまうのではないかとひやひやした。
けれど彼女は強かった。そう見せているだけかもしれないが、俺の前では強かった。

「私から告ってんけどさ、意外にもオッケーもらえて驚いた。私のこと友達なんやと思ってたし」

「……じゃあ、何で別れたんですか。表に出さんだけで仲良かったんでしょ？」

「別れたんは3年になる前のタイミングで、3月の中旬やったかな。……突然、別れよって言われた。もちろん私は別れたないからその旨を伝えてん。でも、信介の言葉に負けてん。…………信介の言葉は正しい。正論や。でも、私の中では不正解やったんかもな」

俯く動作に吊られて、先輩のレモネードは肩から音もなく落ちた。
夕焼けに晒されるそれはその茜色に敵わないのか、消えてしまったように見えた。