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しばらく離さなかった。
すると彼女の瞳から透明な果汁がこぼれ落ちて、口の中に入ってきた。しょっぱい。


唇を離すと、彼女はただ一言、ごめんと呟いた。

彼女は北さんに何度かフラれたと聞いていたが、俺もそうである。俺も彼女に何度もフラれている。







「Aちゃん、ごめん。ごめんな……」

「っ、私、宮のこと好きになりたいよっ……」





彼女に触れようとした手はすんでのところで止まった。
そしてこう零すのだ。

北さんが頭から離れてくれない、と。


自分の心臓がいつもより大きく脈打っている。
花火よりも大きなそれのせいで冷や汗がこめかみを伝う。








「ごめんっ、ごめん、みや……ッ」

「Aちゃんが謝ることやないし、」

「ちゃうの!……ちがうんよ。……私がしたい言うたことも、今居るここも、全部信介と来たとこやのっ」

「は……」

「私の青は信介やの、だから」







彼女の手元にある青色のヨーヨー。

俺はそれを潰したくて堪らなくなった。
それでも彼女が大事そうに持つから奪えなかったのだ。







「ここ、信介が教えてくれてん。綺麗に見えるでって……」

「……俺と北さん重ねとったん?今日ずっと?」






涙を流す彼女を理解出来なかった。

俺の方が泣きたいのに。貴方が泣くから俺は泣けない。
貴方の心をずっと蝕む北さんはどうやったら貴方から離れてくれるのだろうか。
きっと、ずっと無理なのだろうか。








「もう、ええよ」

「み、や……?」

「Aちゃんが北さんのこと好きなんはよぉ分かった。……それでもええねん。それでもええから…………」

「みや」






気付くと流れていた涙は彼女のように綺麗なものではなかった。
どろどろとまとわりついて、欲にまみれていた。

それに手を伸ばす彼女は余計に俺を傷付けることを分かっていない。


頬に触れるその手が、彼女が、全部が俺のものになればいいのに。







「Aちゃん、すき。すきや。俺がAちゃんのこと好きにさせる。やから付き合うてや……」

「ッ」





彼女を抱き締めて毒を吐いた。
麻薬にもなりかねない毒を。

抱き締め返されるそれに俺は少なからず喜んだのだ。







「すき、Aちゃん」






嗚呼、哀れなレモネード。

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作者名:13.m | 作成日時:2020年5月20日 19時

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