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翌朝起きると姉の姿は既になかった。
本当にバイトに行ったのかと、ここまでくると諦めがついた。それと、少しの失望。
テーブルには弁当が2つとメモ。
『大会見に行かれへんくてごめんな。お詫びにお弁当は2人の好きなやつ入れたよ。見に行かれへんけどお姉ちゃん応援してるからね。がんばれ』
読み終えたあと、メモは破り捨てた。
治は何も言わなかった。
姉ちゃんの手作り弁当を持っていくあたり、治は昨日のように「仕方無い」と済ませたのだろう。
そう済ませられない俺は姉ちゃんの弁当を持って行きすらしなかった。
姉の弁当が無くてもバレーには何の支障もなく、好成績を残した。
それなのに、何故か胸がやけにざわついた。
昨日のことがあり、行きも帰りも会話は無い。
いつもなら喧しく家に帰るが、今日は静かだった。
両親は早めに帰ると言っていたから靴を見て居ることを確認。姉は居ない、バイトだ。知っている。
リビングからは両親の話し声が。俺たちの帰宅には気付いていない様子だった。
「Aは今日もバイトなんか?」
「うん。晩ご飯要らんって。……大丈夫や言うてるのになぁ」
「ええ子に育ってくれたけど、 自分のために生きるっていう選択肢が無いんやろか」
更に謎が増えた。
言葉の真意を聞きたかったが、治がタイミング悪く「ただいま」と言ってしまった。
両親は驚きながらも、おかえりと返した。
食卓に並ぶ料理はいつもより豪華で、この場に姉が居ればもっと賑わっただろうに。
「あ、侑今日お弁当忘れてったやろ」
「忘れたんやなくて持っていかんかったんや」
「折角Aちゃんが作ってくれたのに。勿体無いなぁ」
「要らんかってんもん」
「……なに、Aちゃんと喧嘩したん?はよ謝って仲直りしぃや」
「なんで俺が悪いて決まっとんねん」
「あの子あんたらに甘いやん。どうせ侑が理不尽なことで怒ってるんやろ」
「大会見に来てくれへんかったから拗ねとんへん」
治の告白により、しょうもないことで怒るなと母親に叱られた。
この時の俺は、どうしてみんな姉の味方をするのかと疑問でしかなかった。
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宮瀬(プロフ) - 非常にすきです (3月14日 7時) (レス) @page41 id: 1103f6dc65 (このIDを非表示/違反報告)
aikarino(プロフ) - すてき (9月20日 0時) (レス) @page41 id: 6a0c38d02f (このIDを非表示/違反報告)
トマトまと(プロフ) - 素敵な姉弟愛の物語で、とても感動しました。お姉さんもツインズも、お互いのことが大切なのがひしひしと伝わってきて、泣きそうになりました。色々な愛の形をこの作品で感じられて、胸が温かくなりました。素敵な作品を読ませていただき、ありがとうございました! (9月17日 23時) (レス) @page42 id: 1d9d2ab89b (このIDを非表示/違反報告)
えるるるる(プロフ) - めちゃくちゃ読みやすい…!綺麗なお話だ…すごくすき… (2022年6月23日 20時) (レス) @page42 id: 80c508f955 (このIDを非表示/違反報告)
すー - フィクションなのは分かってるんですけど侑くんの言葉の一つ一つやいろんなシーンに感動して泣いてます…。素敵な作品ありがとうございます…!ホントにずっと涙が止まりません…。深夜にボロボロ泣いてる私って…笑これからも頑張ってください! (2021年7月29日 1時) (レス) id: 4912493c11 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:13.m | 作成日時:2020年4月16日 10時