みやのねえちゃん【宮侑】【宮治】

卒業 ページ25

「も〜、2人とも泣きすぎやって」




ティッシュとハンカチをそれぞれに渡し、顔がクシャクシャになった俺たちを姉は笑った。


いつもとは違い、アレンジを加えた髪と制服を見ると余計泣きそうだ。

今日は卒業式。その1週間後に姉は東京へ行く。






「やって、姉ちゃんっ」

「東京行かんでやぁ……！」

「あははっ。……ごめんやけど行くよ」

「むり!!!!」




今度は困ったように笑う姉。


慣れへんよ。言うたやん、やっぱり慣れへんよ。

姉の居ない日常が当たり前になるけれど、それでもきっと姉の姿を探し求めるだろう。
俺たちよりもずっと小さい身長を、香水の柔い匂いを。
その笑顔でさえも。






「北くんどうないしよ、この子ら全然泣き止まへん」

「そんだけ寂しいんやろ」

「あれ、以外にも2人の味方？しゃっきりせいって言うんかと思ってた」

「卒業式にまでそんなん言わんよ。それに、……俺もAと離れるんは寂しいからな」

「北くん……」

「いくら北さんでも姉ちゃんは渡しませんッ!!!!」

「俺らのです!!!!」

「仲良うしとった友達やから寂しいんやろが」





冷ややかな目で見られたが、それもこれからは無いのか。

寂しい。やはり、当たり前は当たり前では無くなるし、日常でさえも変化するのか。
濃い時間を過ごしてきたから尚更辛い。






「おい。アレ、Aさんに渡さなくていいの？」

「気安くAさんとか言うなや!!」

「俺らの姉ちゃんやぞ!!」

「ごめんな、角名くん。この子ら情緒不安定やねん。これからもお願いな」

「はい」






ところでアレってなに？と首を傾げる姉に、隠し持っていた物を突き付ける。

泣きじゃくりながらではなく、もっとかっこよく渡せたら良かったがそれは叶いそうにない。






「「卒業おめでとうッ!!!!」」

「え、花束やん。綺麗やなぁ、ありがとう」

「あかん、姉ちゃんの微笑みだけで泣ける……」

「もう無理や……」





再度ありがとうと言う姉は、きっと俺たちを殺したいに違いない。


余計に泣いてまうやろ、アホ姉ちゃん。

すると治は何か決心したのか、無理矢理泣き止み、姉の手を握った。






「姉ちゃん、俺は姉ちゃん離れなんか絶対しやん。ていうか出来ひん」

「抜け駆けすんなやサム！」

「うっさいわ!!」

「俺だって姉ちゃん離れしてやらんからな!!」





止めたはずの涙はまた溢れ出す。

姉の目にも浮かんだそれは、俺たちと同じ気持ちだったからだと何故か確信した。

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