みやのねえちゃん【宮侑】【宮治】

． ページ22

姉の部屋から物が減る度に、本当に行ってしまうのかという寂しさが募る。

今まで俺たちにたくさんよくしてくれたのだから、自由になって欲しい。けれど、離れて欲しくない。






＿＿＿＿『なんで東京なん!?大阪でもいいやんっ!!!!』

『ツムの言う通りやで。ひとりで東京なんて危ないわ』

『もう決めてん。絶対変えへん』＿＿＿＿






姉の東京行きで揉めたのはもう数ヶ月も前のことだ。

初めて、折れなかった。
俺たちに甘くて優しくて、引き止めたら行かないだろうなんて自惚れていた。


頭では理解出来ているが、どうも心の整理がつかない。

長期休みは帰省すると言っていたが、それ以外はずっと東京。運良く会う機会があったとしても春高。
長い期間姉と会わないことがなかったが故に、初めてのことで困惑する。
いずれ慣れるからなんて言う姉が今は嫌いだ。






「ツムまだむくれてるんか」

「やって行って欲しくないやん」

「もう諦め。あのひと割と頑固やん」

「おねだりしたら行かん思っとってんけどな」






おねだりするだけで行かないと言ってくれるわけもなく。
さすがの姉も意思が固まっているようだった。


ずっと一緒に居ると思ってた。
頭も隅から出て来た姉の言葉に、こっちも思ってたわなんて悪態つく。
そう思っていたのなら、自分から区切りを付けるような真似をしないでくれ。







「今だけ姉ちゃん嫌いや」

「同感。変な男連れて帰って来たらシバいたんねん」

「ツムに姉ちゃんはシバかれへんやろ」

「……五分五分。サムもどうせ一緒やろが」

「俺は姉ちゃんに手ぇ出さんて決めとる。男に精神攻撃して別れさす」

「お前も大概やがな」

「ていうか、そもそも姉ちゃん結婚出来るんかな」

「ほんまに。俺らが結婚するまで姉ちゃん結婚しやんのちゃう」

「ワンチャン」






こんな会話、姉が聞いたら怒るだろうか。
それとも笑うだろうか。

どちらにせよ、姉の部屋で寝転がっている時点で何か言われそうなのは確定なのだが。






「え、あんたら何やってんの」

「なんや、おかんか」

「姉ちゃんを感じてるねん」

「さすがにAちゃんでも引くで」

「「いや、それはない」」

「仲良しやん。あ、そや、Aちゃん明日バイト休みらしいで」





途端に治を見る。向こうも同様である。
これはどこかに連れて行こう。
目を合わせ、頷き合った。


再度おかんに引かれるでなんて言われたのは気にしない。

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