赤鼻のトナカイ ページ14
2人のことが大事でたまらないのと涙を流す姉はひどく小さかった。
そして綺麗で儚い。
先ほどまで凛としていた姉が、自分の胸中を語ると泣き始めたのだ。言葉と共に落ちるそれは俺たちへの愛情のように思えた。
今では姉からの愛情が心地良い。
手のひらを返して調子がいいと言われればそうかもしれない。
目を擦る小さな手をとると少し濡れていた。
「ごめん。ごめん、姉ちゃん」
いつかの言葉だけのものではなく、心から申し訳ないと思った。
姉の自由を奪ってしまっていた。
傷付けてしまった。
当たり前のように注がれる愛情に調子付き、あまつさえ要らないなどと捨ててしまった。
「ほんまに、ごめん。姉ちゃんが俺らのためにしてくれてることを知らずに傷付けてごめんっ……」
「…………私も大概甘いよなぁ」
深く溜息をついて目を抑える姉。
その瞳はもう濡れておらず、赤鼻のトナカイのような鼻だけが違和感を与えた。
「弟離れせなあかんのに、ほんま……。……いつまで経っても可愛い侑と治やない。それでもな、私にとってはずっと大事な弟なんよ。……なんでやろなぁ。なんでこんなに2人のこと好きなんやろ」
「姉ちゃ、っ」
「姉ちゃんはな、2人にのびのびと生きて欲しいんよ」
ひたすらに、姉に幸せになって欲しい。
俺たちのことをこんなにも大事に思ってくれるこのひとが、俺たちよりも大切だと思える人に出会えますように。
俺たちよりも尽くしたいと、愛したいと、守りたいと思える人が現れますように。
「姉ちゃんと結婚するやつは幸せ者やな」
「間違いないわ。こんな可愛くて性格もいいひとそう居らんもん」
「それお姉ちゃんが居らんとこで言うてよ」
「姉ちゃん可愛いなぁ」
「びっくりするぐらい優しいしな」
「ふっ、なんなんほんま」
姉の部屋で川の字になって横になっているのを観たら両親はどう思うのだろう。
俺と治の間にいる姉は、「やっぱ狭いな」なんて言って楽しそうにしている。
こんな風に姉と治と眠るのはいつぶりだったか。
暗いのが怖いと言えば手を握って大丈夫と微笑んでくれたのを思い出す。
「なぁ、姉ちゃん。……暗いの怖いわ」
「もう侑くん高校生……ふふっ、可愛いなぁ」
「姉ちゃん、俺も暗いの怖い」
「治くんもかっ。仕方無いなぁ」
姉の右手は今もあたたかく、どこか懐かしさを感じた。
この先、この手を握るひとが現れたなら、俺と治で見極めてやろう。
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宮瀬(プロフ) - 非常にすきです (3月14日 7時) (レス) @page41 id: 1103f6dc65 (このIDを非表示/違反報告)
aikarino(プロフ) - すてき (9月20日 0時) (レス) @page41 id: 6a0c38d02f (このIDを非表示/違反報告)
トマトまと(プロフ) - 素敵な姉弟愛の物語で、とても感動しました。お姉さんもツインズも、お互いのことが大切なのがひしひしと伝わってきて、泣きそうになりました。色々な愛の形をこの作品で感じられて、胸が温かくなりました。素敵な作品を読ませていただき、ありがとうございました! (9月17日 23時) (レス) @page42 id: 1d9d2ab89b (このIDを非表示/違反報告)
えるるるる(プロフ) - めちゃくちゃ読みやすい…!綺麗なお話だ…すごくすき… (2022年6月23日 20時) (レス) @page42 id: 80c508f955 (このIDを非表示/違反報告)
すー - フィクションなのは分かってるんですけど侑くんの言葉の一つ一つやいろんなシーンに感動して泣いてます…。素敵な作品ありがとうございます…!ホントにずっと涙が止まりません…。深夜にボロボロ泣いてる私って…笑これからも頑張ってください! (2021年7月29日 1時) (レス) id: 4912493c11 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:13.m | 作成日時:2020年4月16日 10時