俺の作る飯を一生食うてください 【宮治】

ぬか漬け ページ25

試合が終わり、帰路に着く者もいるが試合が終わったからと「おにぎり宮」に寄る人は少なくなかった。
今は客足が引いて、暇を持て余していた。

試合を観戦していた彼女の顔は歪んでいた。
それさえも愛おしく思う治はさすがとしか言いようがない。






「どうしたん」

「どっちもいい選手ばっかで惚れそうっ……。日向君高校卒業後海外でビーチしてたからかジャンプ力星海君レベルやしオールラウンダー感えげつないし、木兎君めちゃくちゃバレー上手いのに元気っ子ってどんなギャップですか!?影山君はトスの姿勢綺麗すぎかっ！なんやねんあの子やばいわ!!ロメロは安定やし、ウシワカは圧倒的パワーでねじ伏せる感じがもう、もうっ……くそ!!」

「楽しそうでなによりやなぁ」






侑は何か褒めないのかと尋ねると、彼女の顔は一瞬で無表情になった。相変わらずだと治は心の内で笑う。





「………………あのスパイカーたち使いこなすのはすごいと思う」

「間長っ！」





それよりも彼女が凄いと思ったのが、日向との速攻。
マイナス・テンポで繰り出されるそれは高校時代の日向、影山よりも更に速くなっていた。

そのトスを侑があげることに、悔しいながら惚れ惚れしていた。絶対言わんけど!!と侑を睨む彼女に、本人は気付かない。






「でも及川さんがいっちゃんすごい!!」

「(……あかん、興奮してる。自分の声デカなってるん気付いてないんやろうなぁ。…………そこも可愛いねんけど)」

「やっぱり及川さんすごいなぁ、海外行きたい〜〜」

「大好きやな」

「あのひとはなんか、すごいねん。ほんまに上手い人や。及川さんがいっちゃん好き！あ、でも選手の中では、やからね？その全てを差し置いて治君がオンリーワン！」

「ありがとぉ(……ほんまにこの子は、えらい可愛ええわ)」






観戦客が完全に会場から退出し、2人はやっと片付けにとりかかる。手伝いに来てくれていた男の子はもう遅いからと先に帰していた。

お客さんがたくさん来た「おにぎり宮」だが、商品が少し余っていた。それは選手たちに届けるつもりだ。元より差し入れとして持ってきていた分より、僅かに多くなっただけだった。





「ほな、ブラックジャッカルんとこ行こか」

「うん！」

「侑も居るけど」

「……………………」





遠くを見る彼女を、治はこれでもかと笑っていた。

ねぎトロ丼→←煮込みうどん

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す