俺の作る飯を一生食うてください 【宮治】

いなり寿司 ページ3

昼休みのプロポーズ騒動から時は進み放課後。
今日は散々だと彼女は頭を抱えた。


あの時運良くなった予鈴のチャイムに感謝し教室に戻ると女子から質問の嵐。
むしろ治本人にきいてくれと何度思ったことか。
そもそも場所が悪い。何故人通りが多くなる昼休みの廊下で告白してくるのだ。

馬鹿なのか？やはり馬鹿なのか？


鞄を持ち教室から出ようとすると、橘さんと一際大きな声で呼ばれた苗字。
それは2時間ほど前に聴いたばかりの声。






「宮君……」

「放課後なんか用事ある？」

「バイト」

「バイトかぁ……」





目に見えて落ち込む治。
なんだなんだ、これ以上キャパオーバーさせるなと心で悪態つく彼女。






「なんかあったん……？」

「俺バレー部やねんけどさぁ」

「(存じ上げております)」

「練習見に来てほしかったな思て。……バイトならしゃーないな。急にごめんな」






あの時と同じように哀愁を漂わす彼に、踵を返す彼に、情でも湧いたのか。
彼女は治のブレザーの裾を引っ張った。






「あのさぁ、……」

「ん？」

「部活終わるん何時、ですか……」

「7時とかやけど……それがどないしたん？」

「私、バイト終わるん7時半やねん。だから、その、」

「……！バイト先まで迎えに行くなっ。あ、連絡先教えてもろてもいい？」






何をやっている、私は馬鹿かと彼女は自分を殺したくなった。
こんな、期待させるような行動とってはいけない。
後々自分の首を絞めるような行動はしては駄目だ。


バイト頑張ってなと笑顔で去る治に罪悪感を抱きながら、彼女も足早にバイト先へ向かった。

うなぎの蒲焼→←あゆの塩焼き

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す