俺の作る飯を一生食うてください 【宮治】

あゆの塩焼き ページ2

なんて唐突なのだろうか。


彼は確か、男子バレー部の宮治。
双子の片割れの侑とセットで宮ツインズと呼ばれていたのを思い出す。

クラスの女子が騒いでいたが、これは騒ぎたくなるほどの美形。

……そんな有名人にプロポーズされたのか？
そもそも、宮君が食べる側では？
「俺のために味噌汁をつくってほしい」なんていう、もう古い言葉があった気がする。



彼女は悶々と現実逃避。
その表情を表すなら「無」で十分だろう。

そんな彼女とは反対に返事を待つ治。
けれどどれだけ待っても彼女は口を開かない。





「あの、橘さん……？」

「！ごめんなさい」





あろうことか、逃走。

初めは唖然としていた治だが、すぐに彼女の後を追う。
いきなりプロポーズしてきた男が棒立ちで終わるわけなかった。
帰宅部が現役運動部に勝てるはずもなく、彼女はすんなり捕獲された。

なんで逃げるん、と問う治から漂う哀愁。それにまた彼女は一言謝罪する。





「急にあんなこと言うて困らせてるのは分かっとる。でも、俺本気やねん」

「いや、そうやなくてな……？私ら話したことないやんな？」





彼女の一番の疑問。
話したこともない治が彼女を慕う。驚きでしかない。

会話以前に、彼女からすれば『私のことご存知だったんですね』レベル。
去年も、そして2年生にあがった今年もクラスは別。
友達の友達なんてこともなく、本当に接点が無い。


この現状も、彼の言葉も、彼女を困惑させる。





「とりあえず、離れてもろてもええ……？」

「それはごめんっ」




2人の身長差は30センチ弱。
180を超える大男に迫られれば縮み込むのも当然の反応だ。






「宮治君、やんな？」

「俺のこと知ってるん?!」

「いやだって有名人やん……。逆に私のことよう知ってましたねって感じやねんけど……」

「橘さん知ったん2年生なってからやねんけど、俺そん時から好きやねん」





固まる彼女。止まらない治。






「一目惚れっていうやつ？見た瞬間ビビっときてな、橘さんのこと頭から離れへんくなってん」

「……情報過多。これは夢？夢なん？それとも命日かっ？」

「さすがに好きな人に死なれたら困るんやけど」





とりあえず一回黙って欲しいと言わなかった彼女は偉い。

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