元青道野球部マネのバイト先は青心寮でした

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結城


「今年の1年は不作だ」


俺たちが入部して、少し経った頃、その言葉が俺たちの耳に届いた。


近くに立っていたマネージャーのAAさんは、その言葉に隠しもせず舌打ちをした。


『不作だって』


「聞こえました」


『まだ入部して1ヶ月なのにねぇ。いやだねぇ、もっと考えて話せないのかねぇ』


帰っていく大人たちを横目に見ながらそう呟く


『応援してくれるのはありがたいけどさ、高校生の成長舐めんなよってね』


そして、闘志を燃やさせてくれた。


練習後の自主練に、先輩との練習、守備練習とウエイト。ひとつひとつ、ゆっくり丁寧におこなっていく。


Aさんは部活後の自主練習にも関わらず、残れるだけ残ってボール出しや水分補給の準備をしてくれていた。


俺は家が近いため、練習後は帰宅する。


『哲、はいこれ』


俺が家に帰ることを知ってから、練習後すぐに何か食べるようにと、タンパク質とビタミンと混ぜたおにぎりを作ってくれるようになった。


おにぎりを食べながら帰宅するのがいつの間にか習慣になった。


2軍に入り、バッターボックスに立つ。今日はなんだか調子が良く、ボールもよく見える。


深呼吸をしてピッチャーを見る


狙い球にバットを振るといい音が鳴り響く。そのまま柵を超えてスタンドにボールが入る


一気に湧き上がるベンチ


そのまま勢いがついて、同学年のヒットが続く
気づけば点差は開き、そのまま勝利する


『哲、ホームラン打ったんだって？』


一軍の試合でスコアを付けていたAさんが、試合後に声をかけてくれる


「はい」


『最高じゃん。豊作だって事、これから見せつけていこうね』


そう不敵に笑う。


誰よりもチームに言われた言葉に怒ってくれて、誰よりも成長している事を喜んでくれている。野球は自分の為に、自分が上手くなる為に頑張るが、目の前のこの人の為にも頑張ろうと思えた。

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