元青道野球部マネのバイト先は青心寮でした

日常 ページ18

御幸


いつも通りバイトが終わり、寮の裏の自転車置き場に向かう。
電動自転車の電源を入れて砂利部分を手押しで進み、土手に着く。


漕ぎ始めた頃に少し遠くでバットを振る人の姿が見える。


『相変わらずここでしてるんだ』


「Aさん。お疲れ様です」


『うん、お疲れ様』


「1人でする方がやりやすいんで」


『うんうん、君はそのタイプだったね。ゾノとかは、やるでー！とか言って連れていくタイプだもんね』


「エセ関西弁、1番怒られるやつですよ」


『いいのいいの。御幸が言わなければいいんだから』


「ほんと、良い性格してますよね」


『御幸に言われたら自信持てる』


「褒めてないですよ」


『ふふ。てかさ、こんなこと言ったら、真面目にスイングしてるみんなに悪いなと思って言わなかったんだけどさ』


「え？それ俺に言う意味わかってます？」


『うん、分かってる』


「おい」


『ストレス発散できそうだよね。このスイングの向こうにむかつく事を、、、みたいな』


「考えた事無かったですね」


『えー、やっぱそういう邪念はないんだ』


「ストレス溜まってるんですか？」


『まぁ慣れない環境だし、それなりにね』


「振ってみます？」


『え、いいの？』


「はい」


御幸からバットを受け取り構える。みんなの素振りやバッターボックスの姿は沢山見てきたから、構え方は分かっているつもりだ。


『なんだかんだ、バットは振るの初めてなんだけど』


「かっ飛ばせーA」


『よーし。ピッチャー構えた、投げた、打ったー！』


「空振りですね」


『当たりもしねぇ』


「どんまいっす」


『なんか、変な所痛くなった』


「そんなスイングでしたもんね」

••••→←••••

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す