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「はぁい、完全勝利っと」



涙を流し、泡を吹いている黒スーツの人をボールのように蹴飛ばし、母はあっけらかんと笑った。



なにが、起きたのかはわからなかった。



いきなり、大きくて強くて、黒い犬が現れて。黒スーツの人に襲い掛かったのだ。

鼻につく、墨のにおいがどうしても離れない。


目の前の光景に、思考が追い付かなかった。



「はあ、…葵。見てた?」

「さっき、の」

「夢現。まあ、描いたものを自在に操る力よ。…そうね、全部教えてあげるわ」




―――…


母は、父と駆け落ちをしたという。

父が旅をしているときに、助けたときに恋に落ちたらしい。

だが、母は特別な力を持つ一族で、外界とのかかわりを絶たれていた。結婚なんてもってのほかだった。

それでも、母は父を愛し、父は母を愛した。



一族の者から引き裂かれたが、母はそれを蹴り飛ばして父と逃げたという。




「それから、葵が生まれて…ね。幸せだった。嬉しかった。

けど、審神者制度というものができて…。あの人…お父さんは、審神者になるために連れていかれた。私たちの記憶を消し去って。

…といっても、私は術を跳ね返す能力を持ってたし、あの人のこと忘れるはずがない。どんだけ大恋愛したと思ってんのよ、あのクソ政府…。

でも、アンタは忘れてると思ってた。

忘れて、家族はもともとは二人しかいないって、信じてるものだと思ってた。

でも、…」

「…おぼ、えてるよ…。全部…お父さんのことも、なにもかも…」

「…」

「…っ」




ごぷり



水音がはじける音がした。



「…え…」

「…あちゃあ、もうだめか」



ごぷ



墨が形を変えて、母に迫る。

私が叫ぼうとすると、母は、笑って私を家から出した。






「愛してる、葵」






数時間後、ようやく家に入れば



母の姿はなく、ただ、墨の海が広がっていた。

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亡王月(プロフ) - 続き読みたいィィィィいいいいいいい (2017年2月25日 10時) (レス) id: daae0ce9c5 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 続きが!!続きが!!続きがぁぁぁ!!良いところで終わってるぅぅ!!続きを待っていますぅぅ!! (2016年12月22日 19時) (レス) id: 5d7c126e76 (このIDを非表示/違反報告)
千鶴@いちごおれ - ろいど軍曹さん» コメントありがとうございます!そう言っていただけるなんてとても嬉しいです!重ね重ねではありますが、ありがとうございます!!! (2016年9月5日 20時) (レス) id: 49fc139959 (このIDを非表示/違反報告)
千鶴@いちごおれ - 幻想郷の神になってみたいさん» コメントありがとうございます!バイトも短期だったので、更新再開しました! (2016年9月5日 20時) (レス) id: 49fc139959 (このIDを非表示/違反報告)
ろいど軍曹(プロフ) - あああ素敵本当に素敵です感動…自分が初めて読んだ刀剣乱舞の小説が千鶴さんのこの小説だったのですが、やはり好きです 自分にとっては原点なので戻ってきてしまいます あああ本当に好きですこの小説… (2016年9月3日 21時) (レス) id: d3d55130b6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:千鶴@いちごおれ | 作成日時:2015年11月17日 17時

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