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夢現。
それを初めてみたのは、五年前だった。
―――…
「お母さん、野菜もらったよ」
「よっしゃ!!よくやったなー、葵っ」
「えへへ」
小学校二年生の夏。とてつもない猛暑の日。
私と母と、それからたまに帰ってくる父。貧乏だったけれど楽しかったし、なにより両親は私をすごく愛してくれた。溢れてしまいそうになるほどの、愛情。
別れは、唐突に訪れた。
まず、父がきえた。
蒸発とかであったなら、あの母が止めないはずはない。なにせ大恋愛の果ての結婚と聞いていたからだ。
そして、なにより。
『家族二人だけなんだから、私に甘えなさいよ〜』
家族二人、と母が口から溢した言葉は無慈悲な宣告であった。
いつでも、三人で家族だった。それは私が生まれたときから決められていたことだった。それなのに、それを教えてくれた母が真っ向から否定したのだ。
この世界に、父はいないと。
父が消えてから、十年たったある日。
母が病になった。本人はいたって風邪だなんだのといっていたが、さすがに血を吐かれたので病院に無理やり連れていったところ末期だった。治療費もない、時間もない。
そんな母に与えられたのは、最期は家でゆっくりするというものだった。
「お母さん、バイト先の先輩がくれたの」
「よくやったねえ、葵」
十年前と変わらない、かっこいい笑い方。
十年前と変わってしまった、か細い腕。
「青木葵さんですね?」
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亡王月(プロフ) - 続き読みたいィィィィいいいいいいい (2017年2月25日 10時) (レス) id: daae0ce9c5 (このIDを非表示/違反報告)
紺(プロフ) - 続きが!!続きが!!続きがぁぁぁ!!良いところで終わってるぅぅ!!続きを待っていますぅぅ!! (2016年12月22日 19時) (レス) id: 5d7c126e76 (このIDを非表示/違反報告)
千鶴@いちごおれ - ろいど軍曹さん» コメントありがとうございます!そう言っていただけるなんてとても嬉しいです!重ね重ねではありますが、ありがとうございます!!! (2016年9月5日 20時) (レス) id: 49fc139959 (このIDを非表示/違反報告)
千鶴@いちごおれ - 幻想郷の神になってみたいさん» コメントありがとうございます!バイトも短期だったので、更新再開しました! (2016年9月5日 20時) (レス) id: 49fc139959 (このIDを非表示/違反報告)
ろいど軍曹(プロフ) - あああ素敵本当に素敵です感動…自分が初めて読んだ刀剣乱舞の小説が千鶴さんのこの小説だったのですが、やはり好きです 自分にとっては原点なので戻ってきてしまいます あああ本当に好きですこの小説… (2016年9月3日 21時) (レス) id: d3d55130b6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:千鶴@いちごおれ | 作成日時:2015年11月17日 17時