登校 ページ3
「行ってきまーす」
「行ってきます」
何時もは兄さんを見送ってから着替えて出るんだけど、今日は一緒に登校。駅までだけど。
「雄英ってさ、やっぱ勉強難しい？」
「まぁ難しいな。ヒーロー科といっても高校生だ、そこら辺も疎かに出来ない」
「やっぱりかぁ」
勉強は嫌いじゃないけど、やらなくていいならやりたくない。本心です。
「ねぇ、あの制服雄英じゃない？」
「え！本当に？」
「うわ、イケメン」
「格好いいー！」
「一緒にいるの妹かな？こっちも可愛い〜」
おい最後なんか飛び火した。兄さんだけに注目しとけよ格好いいだろ私の兄さん。
兄さんが控えめに特にこっちに注目してる女性陣たちに微笑むと、黄色い悲鳴が上がった。朝から平和だなぁ。
「それじゃあ、行ってくるね」
「行ってらっしゃい、また家でね」
ぽんぽんっと頭を撫で、兄さんは駅の改札を潜った。後ろ姿も格好いいかよ。
「・・・・よし、行こう」
この前ふと思い付いて米津玄師さんを検索してみたら、なんと見付けました。「ピースサイン」もありました。他のアニメの主題歌になってたけど。
音楽プレイヤーにイヤホンを挿して、大きめの音量で再生する。アニソンらしい熱さがよき。
［なぁなぁ！今日は早いんだな！］
手乗りサイズの猿に角が生えたような鬼がピョーンと飛び出してくる。
それに続いて小さな鬼たちがわらわらと出てきて勝手に喋る。サビなんだから静かにしてほしい。
いつもそうだ。兄さんといると寄ってこないのに、いなくなったとたん纏わりついてくる。
無視するようにしているが、気になる話があると無意識に視線をそっちに向けて仕舞うのでこいつらはその一瞥に大喜びする。
一瞥してほしいから一杯話す。だって、私は視てるし聞こえてる。
だから寂しがり屋の彼らは私に構うのだ。
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