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3話 ページ4

イフリートside

1年春

「セルキー、これ落としたよ」
「ありがとう」

バビルス入学から3ヶ月、その日は普段よりも少し暑く、目の前で彼女のポケットから落ちた青いハンカチを拾って渡した時、目についた。
それは陶器のような彼女の二の腕で硝子のように淡く光っていて、これが。と心の中で呟いた。セルキーの一族はイフリート一族と同じで歴史が長いことに加えて、深海の化身のような美貌で有名な一族だ。だから鱗の伝承は知っていたけれど実物を見るのは初めてだった。

「イフリート?…ッ!」
「えッ?!あ、ご、ごめん…?」

僕の視線の先にあるものに気づいた彼女がすごい勢いで隠すものだから、思わず両手を挙げ、僕は何も触っていないし、触りません。と冷や汗をかきながら主張する。
彼女はすごく目立つわけではないけれど、入学当初から着実に彼女に思いを寄せる悪魔を増やし続けている。そんな子に僕が何かしたなんて噂が立てば、彼女も僕も当分は平穏な学校生活を送れなくなってしまうだろう。
両手を挙げたまま硬直する僕に、二の腕を庇いながらじっとり、とした視線を向けてくる彼女は唸るように声をかけてきた。

「見た?」
「……いや、全然」
「見たよね?」
「…いや、見たかと言われたら見たかもしれないけど、それは魔術の視点から見て本当に見たと言え」
「見たね?」
「見ました!ごめんなさい!」

思った以上にヤバいものを見たのかも知れないと、さっきから冷や汗が止まらない。
嘘もバレたし。圧に負けて嘘なんかつくんじゃなかった。
授業が始まる前の静かな廊下で、正座をし両手を挙げる僕と二の腕を押さえながら僕を見下ろす彼女。構図が最悪すぎる。ここに誰か通ってしまえば、完全に僕が加害者に見えるんだろうな。
…実家に帰りたくなってきた。

「…私の鱗の噂は知ってるの」
「はい」
「どこまで?」
「ど…?えっと、鱗を結婚相手に渡す、んだよね?」

それ以外に何かあったか?
恐る恐る彼女を見上げながら尋ねれば、彼女は「そう」と一つ呟いて、「…いつまでそうしてるの?」と声をかけてきた。先ほども冷や水を被せされたような雰囲気は霧散し、なんだかわからないけれど許されたのだ、とほっと息をつき立ち上がる。
彼女は僕のその様子をじっと見て、鱗が現れていた腕をさすった。

「普段は見えないんだけど、乾燥すると出てくるの。…言いふらさないでね」
「も、もちろん」

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本人 - 紅しょうがさん» ありがとうございます☺️ (7月17日 22時) (レス) id: ba52897e96 (このIDを非表示/違反報告)
紅しょうが - めちゃくちゃ好きです‼更新待っています! (7月17日 19時) (レス) @page6 id: 333fed96b4 (このIDを非表示/違反報告)

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作成日時:2023年7月14日 18時

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