継子の仕事は師範のネジ拾い【伊黒小芭内】

一本【主】 ページ3

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私の師範は優しいんだよ！


以前 善逸くんにそう言うと、彼は酷く顔を歪めて
「アレが優しい？…ありえない！騙されてるよ！」と
凄い勢いで言われた。



しかし、本当に優しいのだ。



毎日任務があるというのに私に稽古をつけてくれるし
あまり無理をするな。と私の体調を気遣ってくれる。

私からすれば師範の体の方が心配だけど
「俺にはAが居れば問題ない」と優しく
私の頭を撫でながら言うのだ。


それに、休日となれば一日中私に付き合ってくれる
甘味処に行ったり着物や簪を買いに行ったりと
あちこち連れ回しても、文句を言わないどころか
私に支払いをさせないという紳士っぷりだ。

申し訳ないと言うと
「それ以上のものを俺はいつももらっている」と
師範は言うのだけど…はて、私は何かあげましたか？


師範の心配事といえば、まともに食事をしないこと。

包帯の下の痛々しい傷のせいもあって固形物を
あまり口にはしない。主食は高級とろろ昆布。


私は、師範の過去を知っている。

鬼に家族を殺され、心に大きな傷を負った私を
師範は継子として迎え入れてくれた。
しかし、中々癒えることのない心の傷に
私は毎夜毎夜一人で泣き続けていた。

そんなある日、師範は自分の過去を私に話してくれた


本当は誰にも話したくなかっただろうに…
師範なりの精一杯の慰めだったのだと思う。



それから私は、師範への恩返しの為 そして
烏滸がましいとは思うが、師範にいつか
幸せになってもらいたい！その想いだけを胸に
鬼殺隊となり鬼を狩る道を選んだ。




そんな師範の幸せの予兆は突然現れる。





恋柱である甘露寺蜜璃さんに師範は恋をした。



直接師範から好きだと聞かされたわけではないが
休日には一緒に甘味処に行っているし
文通もしている。


私は、少しモヤモヤする感情を押し殺し
師範への恩返しをするなら今だ！と
二人の恋路を応援することにしたのだ。





しかし…








彼女と出会ってからというもの…




師範は少し変わってしまった。









頭のネジを数本ほどどこかへ紛失したかのように。





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