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ナワーブがそんな風に思っていたなんて知らなかった。
体中に悪寒が走る。
ナワーブに言われた言葉は原因じゃない。
ただ、私はそんな言葉をかけてもらえるような
大層な人間ではないというだけ。
「あれ……Aさん、大丈夫?」
ベッドの上で膝を抱えてうずくまっていると、
今度はイライさんが部屋に入ってきた。
イライさんは優秀な占者だから
私の悩みも解いてくれるのかも知れないな。
『は、い…』
「本当に?さっきよりも顔色が悪いし、
脂汗とかも浮かんでいるよ」
そう言うと、イライさんは手袋を外して
私の額に手を付けた。
ヒンヤリとした掌は気持ちよくて、
思わず目をつぶった。
「ほらほら、寝てしまうなら体をおろして。
ベッドで横にならないと疲れは取れないよ」
『ちが…い…ま、す。ねむ、くない…です』
まるでホセさんの催眠術のように、
やすやすと眠りにつきたい気分にさせられる。
気力で体を起こした。
「あれ、起きるの?」
『大丈夫、です…。イライさん、こそ、ゲーム中に、
吃驚させ…てしまって……ごめん、なさい』
「大丈夫だよ。吃驚したけど、君が無事でよかった」
微笑みながら、そう言われた。
私は顔が赤くなるのを感じた。
憧れの人にそんな風に思われて、
嬉しくない女性はいないだろう。
顔を覆うようにベールをかぶっていてよかった。
「あれ、赤くなってる?」
『ふぇ、な、なんで…見えて……』
突然、見透かされたようにそう言われた。
イライさんお得意の天眼、だろうか。
私が慌てたように蒲団を被ると、
驚いた声が聞こえた。
「ご、ごめん。
本当に赤くなっているとは思わなくて」
緊張してるみたいだったから、と弁解が聞こえ
彼が本当に私を見ていたのではないと気づいた。
ただの勘違いか。
なんだか自意識過剰に思えてきて、
私はもっと蒲団をしっかりと被った。
『ごめ、なさい……』
「え?な、何で謝るんだい。
私の方が謝らなければならないのに……ごめんね」
『いえ……』
私はなんだか気まずくなって、
もう一度布団をかぶりなおした。
ヴェールの隙間から見えた彼の顔は
少しだけ赤くなっている気がした。
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